東京・白金台にある八芳園が2025年2月からの休館・改修を経て10月1日にグランドオープンする。1943年の創業以来、最大規模となったリニューアル。そのお披露目会が9月17日に行われた。

日本有数の婚礼式場としてその名を馳せてきた八芳園は、今回のリニューアルでどのように生まれ変わったのだろうか。

(リニューアルしたメインロビー。リブランディングのコンセプトである「日本の、美意識の凝縮」を象徴する空間として、壁面には水墨画家と組子職人による圧巻のコラボ作品が。伝統美に包まれる空間に生まれ変わっている。)

400年前の江戸時代初期、東京・白金台の地に作庭された広大な日本庭園。その一角ではじめたひとつの料亭(現在の壺中庵)からスタートした八芳園は、以来、食、婚礼、ビジネスイベントのプロデュースや企画運営を行い、2022年にはアメリカのジョー・バイデン元大統領と岸田元総理の夕食会に利用されたこともあった。

取締役総支配人の関本敬祐氏は今回のリニューアルについて「文化資産を活用したエリアプロデュース企業への変革を起こすためのスタート」であると説明。

八芳園はコロナショック期に婚礼依存型体質からの脱却を掲げていたが、これについても2023年10月1日から2024年9月30日の期間で婚礼事業は前期比106%、さらにイベントセールス事業は前期比133%であると説明し、順調なポートフォリオ転換が進んでいることをアピールした。

今後はさらに成人・長寿・誕生など人生の節目を支える「生涯式場」としての進化を目指しながら、結婚式においてはその価値をより深化させていくという。今回のリニューアルでは庭園内に独立型チャペル「Celebration Hall -The GARDEN-」を新たにオープンしたほか、ふたつのバンケットの内装も一新している。

またポートフォリオ転換のひとつとして重要視しているのが、多様化するMICE(Meeting, Incentive Travel, Convention, Exhibition/Eventの頭文字をとったビジネスイベントの総称)の獲得だ。

総バンケット数は15から11へと減らしているものの、国際会議等も想定して1会場あたりのキャパシティを拡大。また世界の賓客をもてなし、持続可能なあり方を目指した結果、宴会場を用途とする建物としては国内で先駆けとなるZEB Oriented認証(建築物の省エネ化を目的とした認証のひとつ)を8月に取得。環境配慮型施設に生まれ変わった。

こうしたリブランディングを象徴するのが、関本総支配人も「今回のリニューアル最大の見どころ」という、新設された会員制特別フロア「CLUB FLOOR」だ。

今回新しくなったファサードには企業向け会員のみが使用できる専用エスカレーターを設置。メインロビーを経由することなく「CLUB FLOOR」へと向かうことができる。

エスカレーターを上った先には「ROOFTOP TERRACE」が。庭園を一望することのできる会員だけのオアシスだ。

ここから「CLUB FLOOR」のなかへ進むと、正面にはバンケット「STUDIO KOKU」。最大収容人数はスクール140名、シアター322名で、何より圧巻なのは全長20mと7mの壮大なLEDウォール。ダイナミックで自由度の高い視覚演出が可能になりそうだ。

隣には会員専用の「LOUNGE KOKU」も併設。ここではドリンクやリフレッシュメントを自由に利用可能。窓一面に広がる緑に癒されながら心静かな時を過ごすことができる。

さらに6階へ進むと、一転して明るく洗練された雰囲気の「HALL HAKU」が現れる。

こちらは着席(円卓)で256名、立食300名の収容キャパがあり、庭園を望む「BAR HAKU」も隣接している。

2043年には創業100周年を迎える八芳園。9月には東日本旅客鉄道株式会社と白金・高輪のエリア価値向上に向けて「共創パートナーシップ協定」を締結したこともあり、今後ますますエリアプロデュースにも期待ができそうだ。

日本の美意識と文化を次世代に継承し、世界へと発信する担い手として進化を遂げることができるのか、期待していきたい。