山口達也(46)が強制わいせつで書類送検されたことを受けて2日、TOKIOの山口以外のメンバーが都内のホテルで記者会見を行い、謝罪した。その中で、福島民友新聞の記者から「悲しい事件がありましたが、福島の復興再生のためにどのように取り組む考えですか」という質問があった。
リーダーの城島茂(47)は「心のふるさとである福島、そして福島のみなさんに対して……いや、言葉が出ないのが悔しいですが、すみません。なんとお詫びしていいのか」と深々と詫び、国分太一(43)は「公式に福島を応援できなくなっても、メンバー個々人として福島を応援し続けたい」と語った。
TOKIOは、福島復興を陰日なたで支えてきたことで知られている。それだけに視聴者が懸念するのは、今回の一件で「福島との絆」が切れてしまうのではないかということだ。TOKIOが応援してきた福島は、いまTOKIOをどう考えているのか。NEW’S VISION編集部では、県と、そして県民の人たちが、事件をどうとらえているのかを知るために、会見の同日の福島に赴いた。
TOKIOと福島の絆が切れてしまうのではないかーー。そんな心配が広がったのは、事件発覚から早々の4月26日のことだった。福島県がTOKIOを起用したポスターを撤去し、福島じゅうから「TOKIOが消えた」ことに端を発する。
福島県、TOKIOポスター撤去 山口メンバー書類送検
https://www.asahi.com/articles/ASL4V46QCL4VUGTB005.html
福島県は震災後の12年から、農産物の安全性をアピールするにあたり、CMやポスターでTOKIOを起用し続けてきた。TOKIOの「復興応援」が本物なのは、12年以来、無償で協力を続けてきたことにも現れている。心温まるエピソードとして多くの人が見守った関係だが、今回の山口の一件で崩れたかに見えた。
ソーシャルメディア上では、ポスターやのぼりが県内で一斉に取り剥がされた様子が写真入りで多数報告された。「山口メンバーがやったことはそれほど重大。残念だが仕方ない」とする声が見られる中、「さんざんTOKIOの好意に甘えて、無償でCM起用してきたのに、事件が起こったら”いなかった”ことにするのか」「リーダー(城島)と松岡(昌宏・41)2人だけののぼりを撤去する必要ある?」など、一方では福島の対応に非難の声も飛んでいた。
福島駅から徒歩で10分、福島市内にある県庁・県農産物流通課を訪ねた。写真撮影を交えた取材は事前に断られたが、口頭で以下のように回答があった。
ーー福島県内で一斉に”TOKIOが消えた”と話題になってますが、県庁からの指示はあったのですか?
担当・半沢さん「県庁から指示をしたのは、県庁内など県の施設からの撤去のみです。それ以外は指示をしてません。参画団体さんの判断だと思います」
ーーTOKIOと福島の絆が切れてしまう、との懸念も飛んでいますが、将来またTOKIOが福島を応援する機会は来るのですか。
「県としてはまだ何も決まっていません。いまは何も言えない状況です」
県庁側はこう答えたが、主要駅や県内の道の駅、福島県産品応援店などからTOKIO関連の広告宣伝物は一斉に姿を消している。個々の店舗オーナーの判断で、ここまで一斉に横並びの対応になるとは思えない。
各所に取材するとやはり、「県庁から連絡があり、すぐ廃棄処分にした」(JAふくしま未来)、「県庁から今後の配布を止めるようにと連絡があった」(ふくしま応援店事務局)、「県庁からポスターは貼らないよう指示を受けた」(道の駅「安達」智恵子の里関係者)との声が聞かれた。お役所の体面上、やむを得ない苦渋の決断に違いないだろうが、杓子定規な対応に寂しさを禁じ得ない。
県庁内でも同じだった。やはり新聞報道にあったようにポスターはすべて剥がされていた。だが、ある一角に、ふくしま復興を応援するこんな寄せ書き(※写真)を発見した。こんなところにも端々に「TOKIO」の名が見られる。ポスターは剥がせても、県民の声は消せないということだろうか。
■「福島はいつまでも待ってる」
県民は山口達也を、そしてTOKIOをどう思っているのか。GWでにぎわう福島駅で県民の声を拾った。
「DASH村の頃から、復興の時もTOKIOはいつも福島のそばにいてくれた。今度は福島がTOKIOを応援して支えたい。福島はいつまでもTOKIOを待ってるよ」(大学生・男性)
「山口メンバーが(女子高生に)やったことは悪いことだけど、彼が福島で頑張ったことまで無くなる訳ではない」(30代・主婦)
「とにかくビックリした。でも(国分)太一さんが泣きながら”それでも福島の野菜は美味しい”って言ってくれたことはグッと来た。嬉しかった」(大学生・女性)
「きちんと反省して、相手に誠意が伝わったなら、福島に帰ってきてほしい。会見でも言ってたけど、TOKIOのふるさとは福島なんだから」(大学生・女性)
インタビューした9割以上の人は、「山口の罪は良くない」としながらも、今後も変わらずに応援したいという姿勢は強く伝わってきた。ただし、なかには山口に対して厳しい意見がなかったわけではない。
「山口さんはこのまま来なくていいが、他のメンバーは何もしていないのだから、復帰してほしい」(40代・サラリーマン)
「山口さんは良い人だと思ってたのに、やっぱり芸能人なんだと幻滅した。4人で活動すればいい」(20代・OL)
山口への厳しい声は当然あるにしても、インタビューした全ての人が、TOKIOには「なにかしらの形で、福島と関わり続けてほしい」と願っていたのが印象的だった。
ちなみに南福島駅前で芸能グッズを取り扱う『JUSTY』に取材したところ、「(県内では)事件後もかわらずTOKIOの商品は人気で取り扱っている。流通量が減ることもなかったし、買取査定にも変化はない」とのことだった。
冒頭の国分の言葉ではないが、事件の影響で番組やCMがどうなろうと、福島県民とTOKIO個々人の絆は変わることはなさそうだった。
しかし、山口が丹精こめて米作りに挑んだ「田んぼ」を取材したところ、意外な反応がかえってきた。TOKIOがより深くかかわった農家の人たちから聞こえてきた切実な声を、次回レポートで伝えたい。