朝日新聞社が5月28日、平成30年3月期の決算短信を公開した。連結売上高は前期比2.9%減の3894億円で6年連続で減収となった。ここ「5年で半減」とも言われる、止まらぬ部数減は周知の通り。それにともない広告収入が下落したことは容易に想像できるだろう。
【平成 30 年3月期 決算短信 - 朝日新聞デジタル】
http://www.asahi.com/shimbun/company/short_financial_result_032018a.pdf
ここ「5年で半減」とも言われる、止まらぬ部数減は周知の通り。元朝日新聞の編集委員で同社を出禁になったという川村二郎氏が『デイリー新潮』で伝えた情報では「(13年には約760万部だった部数が)社内で400万部を切ったとの噂が流れている」との情報もある。それにともない広告収入が下落したことは容易に想像できる。
【社を出禁になったOBが語る「森友文書スクープ」でも朝日新聞がはしゃげない事情】
https://www.dailyshincho.jp/article/2018/05060701/
2018年5月6日 デイリー新潮
ところがである。利益を見ると、なんと35.9%増の120億円(増益は2年連続)。斜陽の新聞どころか、沈まぬ「朝日帝国」の健在ぶりを見せている。前年に大幅リストラし、早期退職の特別損失30億円を計上した恩恵が現れているのだろう。
とはいえ、同社の前年の有価証券報告書をみると、本業の「メディア事業」ではなく、「不動産事業」で稼いでいることは明白。17年の売上・利益内訳ではメディア事業売上は3,675億円・営業利益15億円(77.5%減)に対し、不動産事業の売上は201億円と小規模なものの、営業利益が49億円(13.3%増)と新聞の不調を補って余りある勢いだ。
それもそのはず、テナント貸しのビルには錚々たるビルの数々が並ぶ。大阪本社のある、459億円(簿価)の「中之島フェスティバルタワー」を筆頭に、「同フェスティバルタワーウエスト」(475億円)、「有楽町センタービル」(=有楽町マリオン/49億円)、「有楽町駅前ビル」(=ITOCiA /35億円)。そこに築地の「本社ビル」も252億円、しめて有形固定資産は2,191億円。総資産(2016年3月時点)は6,052億円にのぼる。ここに今後は高級外資ホテル「ハイアット セントリック」を誘致した「東京銀座朝日ビルディング」の家賃収入も加わるという。
もはや、どれだけ新聞本体が世間に叩かれ、部数を落とそうが、痛くも痒くもない盤石を誇っているのである。不動産業に堕したメディアとしての矜持はさておき、もしも現在の朝日新聞を支えるのが不動産部門であるなら、それを築き上げる礎の一つとなった築地・本社ビルの取得経緯に再注目しなければならない。
■相場200万円を56万で取得!? モリトモ顔負け、不可解すぎる格安払い下げの謎
東京都中央区、銀座にも程近い築地の一等地にそびえ立つ朝日新聞東京本社ビル。地上16階、地下4階、延床面積は67,980平米、地下には大浴場と上層階にはレインボーブリッジを望む宿泊施設も設置されている。安倍政権を監視する、クオリティペーパーの牙城に相応しい建物といいたいところだが、この本社ビルを含む土地をかつてモリトモ顔負けの格安の国有地払い下げで取得している。
朝日新聞社が本社ビルを有楽町から築地に移したのは1973年1月。元々あったのは海軍経理学校跡地の約4440坪(1万4680平米)で、これを2つに分けて2つの方法で取得している。大半にあたる3041坪分はいわゆる「国有地払い下げ」によって1坪あたり56万円(当時の相場は坪200万)で取得、残りの土地は朝日新聞社が持っていた杉並区の土地、通称「朝日農園」と交換という形で得ているのだ。
あきらかに不公平極まりない土地取得である。そもそも「国有地払い下げ」には、競争入札と随意契約がある。国有財産法の規定には、公園や病院や学校など特に公共性の高い用途には「無償あるいは減額して売却できる」とあるようだが、いち民間のメディアに過ぎない新聞社が、なぜ競争入札ではなく、優遇措置の随意契約を受けることができたのか。
国有地払い下げによる土地取得に詳しい弁護士から話を聞いてみた。
「朝日新聞社の73年の国有地譲渡は、相場から考えると『低額譲渡』にあたります。しかし、当時のマスコミは朝日新聞に限らず『公共性の高い報道機関である』との理由で、本社社屋を国有地から随意契約で入手しています。
法が、一般競争入札を原則とし随意契約を例外としているのは、契約の手続を公開し、公正さを確保するため、また契約価額の有利性を図りつつ、随意契約による弊害を防止するためです。随意契約によるべきかどうかについては国には裁量がありますが、一般的に上記の趣旨に照らし、諸般の事情を総合的に勘案して決すべきものといえます。
朝日新聞に法的な土地取得情報の開示責任はありませんが、森友問題について説明責任を問うている朝日新聞の論理にしたがえば、説明してほしいところです」(まつさと法律事務所・金沢幸彦弁護士)
朝日新聞社はこの73年の破格の土地取得によって、元々あった有楽町本社(現在は有楽町マリオン。※東宝・松竹と共同)の売却を免れ、その後、高度成長期の不動産収益を重ねていったことは言うまでもない。日々の報道で長々と森友問題を取り上げ続ける新聞社として、また不動産事業で収益を上げる企業法人として、一度は読者の前で土地取得問題の襟を正すべきではないだろうか。