大阪で観測史上最大の震度6弱を記録した6月18日の大地震。震源地である大阪北部の茨木市・高槻市ではいまだ都市ガスが止まった状態が続き、高槻市立寿栄小学校では9歳の女児が亡くなるという悲劇が起きた。だが、終日のテレビ中継に日本中の視聴者が心を痛めていたその裏側で、NHKが不遜ともいえる報道姿勢を連発して物議をかもしている。

まず多くの視聴者が「違和感」を覚えたのが、地震の約1時間後、同日8時50分代のニュースだった。現地の人たちに情報収集に努めるよう呼びかけをする流れの中で、高瀬耕造アナ(42)が「”情報弱者”の皆さんに情報を届けてください」とハッキリと読み上げたのである。

もちろんネットなどに不慣れなお年寄りや、体の不自由な方々を指しているのだろうが「情報弱者」というフレーズには、上から目線のニュアンスが含まれるというか、発言する側が情報の多寡を判断して揶揄する意味合いを感じてしまう。編集部と同様に、放送が耳に入った瞬間に違和感を覚えた視聴者も多かったようで、直後の SNSや掲示板には「情報弱者はニュースで使えるワードなの?」「差別語というか侮蔑語じゃないか」「一般に使う分には問題ないけど、NHKのアナウンサーが言って良いはずない」という批判が飛び交っていた。

「情報弱者」を検索してトップに出てくる『ニコニコ大百科』でも、やはり「情報弱者とは、情報・通信技術の利用に困難を抱える人のこと。ネットではもっぱら情報を充分に活用できない者の意味で使われ、罵倒語としても用いられる」と説明されている。また米国では、身体に障害のある人を「弱者」と呼んだだけで裁判になった例もあるという。

NEW'S VISION編集部で、ネットスラングに詳しいソーシャルメディア活用の専門家・落合正和氏(ネットメディア研究所)に話を聞いたところ以下の説明を受けた。

「たしかに”情報弱者”という言葉は、Twitterなど一般的なSNS、2ちゃんねるといった大型掲示板といったネット上でかなりキツイ文脈で使用されています。背景にはインターネットユーザーと旧来メディアの利用者との間の対立・溝があります。ネットユーザーはあらゆる所から情報を集められるという点で、ネットを使いこなせない上の世代に対し、皮肉めいた意味合いでこの言葉を使っている現状があります」

いまや若い世代の多くが、NHKが発信する報道や論説に疑問を持ち、批判の言葉を持つ時代となった。同局の制作サイドには、自分たち旧メディアのみを視聴してくれ、情報の検証を行わない人たちを見下し、いいように誘導しやすい「カモ」だと考えている空気があるのではないだろうか。

■箕面市の学校を無許可撮影し、教師に窘められる場面も

同日のNHKの暴走報道はこれだけではなかった。8時52分ごろにも、大阪・箕面市の学校から学生たちが校庭に避難する模様を中継していたのだが、先生から「情報管理とかそういうのもあるんで」「勝手に撮ってもらったら困る」とクルーが怒られる場面も放送されている。

LIVE中継の画面には生徒たちの顔が隠されることもなく、はっきり映し出されていた。彼ら生徒の多くは登校時間中に大地震に遭っている。学生ゆえに携帯やスマホもなく、同時刻にはまだ家族との安否確認さえなされていない状況であろう。報道至上主義の名の下に、不安を抱えたままの子供たちを許可なしで撮影し、茶の間の見世物にする権利などあろうはずはない。

また、その後も同局では4時55分の『ニュース シブ5時』の中で、ブロック塀の下敷きになって亡くなった女児の同級生にまでマイクを向け、詰問するという愚挙に及んでいる。余震の恐れも消えず、友達が亡くなったショックを受けている最中の9歳の子供にマイクを向けるなど鬼畜の所業である。同局ではこのインタビューをその後も何度か繰り返し放送していた。

「寄り添う報道」を謳うNHKはどこへやら。「報道の正義」とやらは、晒し者にされる被害者らを踏み台に成り立つものらしい。