草なぎ剛(43)が3月29日、事務所独立後、初のレギュラーとなる(※放送は不定期)『草なぎ剛の“ニュースな街に住んでみた!”韓国・ソウル』(NHK)に出演し、その深く掘り下げたドキュメント番組への挑戦が高い評価を得ている。

同番組は「ニュースをにぎわせている国で、実際に暮らしてみる」というドキュメント番組で、今回は北朝鮮問題で揺れる韓国・ソウル編。同地は草なぎが「自分の原点」と語る場所であり、2001年から10年まで放送された『チョナン・カン』(フジテレビ系)で流暢に韓国語を操ったことも記憶に新しい。今回はその草なぎゆかりの街・ソウルの下町で、数日間のアパート暮らしをしながら、韓国の知られざる部分に迫るというのが番組の主旨であった。

番組では下町「龍山(ヨンサン)」地区を舞台に、「失郷民(シリャンミン)」と呼ばれる、朝鮮戦争の際に北朝鮮から韓国へ避難し、故郷に戻れなくなった人々をクローズアップ。『イムジン河』を歌う北朝鮮からの脱北二世や、離散してしまった家族、軍事境界線近くのキョドン島から「友よ!(チングヤー!)」と叫び続ける老人など、現代韓国の光と闇を映し出す内容で、これまでの草なぎの仕事とは一線を画していた。

ソーシャルメディア上でも「歴史とか政治にかなり踏み込んだ社会派の番組で見応えがあった」「草なぎクンがここまで韓国語ペラペラで驚いた。手袋はずして握手したり、人柄が見えて良かった」など評価するが多かった。

だが、その一方で「いい番組なのに、ところどころで不自然に挿入される偏った思想が邪魔して入り込めなかった」「日本批判のシーンを作る時に、演出がすごくヤラセっぽくなって嫌だった」「ナレーションで”日本が韓国を支配していた”って言わせるのってオカシイだろ?」で、NHKの演出を疑問視する声も多数見られた。

■「日本人が嫌いなわけじゃないの。心が痛いだけなの」

特に「ヤラセっぽい」と批判が多かったのは、街を歩いていた草なぎが声をかけられる場面。声をかけてきた男が「チョナンカン! ファンです、近くで舞台の稽古してるんですが見ませんか」と言い、ついて行ったら「大阪を舞台にした在日韓国人の過酷な生活を描いた舞台劇」だったという、いかにもな展開。稽古の中、男たちは「ニッポンの国益のために〜」と叫んだり「おじいさんが朝鮮人なら息子も孫も朝鮮人」などと罵られるシーンを演じてみせた。朝鮮戦争の問題をテーマにしつつも、どうしても在日問題を入れたかったのか。これはさすがにやりすぎだろう。

また、共演するNHKの解説委員・柳澤秀夫(64)が老人たちの集会所を訪れるシーンにも違和感を覚えた視聴者が多かった。韓国のお婆さんが微笑みながら「二二んが四・二三が六」と九九の暗唱を見せてくれていると、隣りのお婆さんが「当時はみんなそうだったよ。終戦して解放された。どれだけ日本人にいじめられたか!」と怒り出したのである。そして、追い立てられる柳沢にかけられたのは「日本人が嫌いなわけじゃないの。心が痛いだけなの」という言葉であった。これも、いかにもな「NHK」節。お婆さんの言葉に、一切反論や検証することなく、額面どおりの既定事実として受け流す柳沢のNHK解説委員としての姿勢に疑問を持つ視聴者もいたようだ。

ジャニーズ事務所から独立した、草なぎは民放での仕事がほぼ消滅。その後、受けたテレビ仕事は、朝日新聞の記者役を演じた同局のドラマ『未解決事件 File.06「赤報隊事件」』だけ。社会派タレントに目覚めたという見方も出来るが、前出『ニュースな街-』番組でも、ほとんど政治的な発言をしていないだけに「左派・革新勢力にいいように利用されている」という見方も業界内にはある。

つまりテレビ局に対し、圧倒的な発言権を持っていたジャニーズを離れたがゆえに「仕事を選べなくなったのでは」と懸念されているのだ。韓国の南北分断で故郷を失った「失郷民」と、SMAPの分裂で行き場を模索する草なぎの姿が、重なってみえるのは気のせいだろうか。