【2025年10月8日 ポルトープランス(ハイチ)/ニューヨーク発】
ユニセフ(国連児童基金)が本日発表した報告書「チャイルド・アラート:ハイチの子どもたちが直面する複合的危機」によると、ハイチで暴力によって住まいを追われた子どもの数は過去1年間でほぼ倍増し、現在では68万人もの子どもが家から引き離されています。ハイチ全土では130万人以上が避難を余儀なくされており、暴力の激化、サービスの崩壊、人道支援の行き届かない状況が、ハイチをさらに深刻な危機へと追い込んでいます。
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報告書は、避難の規模がかつてないほど深刻であると警鐘を鳴らしています。2025年上半期だけで国内の避難拠点の数は246に急増しており、暴力の拡大により多くの子どもが繰り返し避難を強いられています。
ユニセフ事務局長のキャサリン・ラッセルは次のように述べています。「ハイチの子どもたちは、恐るべき規模の暴力と避難を経験しています。避難するたびに、子どもたちは住む場所だけではなく、学校に通う機会や、子どもらしく過ごす時間までも失ってしまうのです」
武装集団から逃れて、仮設の避難所となっている小学校で寝起きをする親子(ハイチ、2025年3月18日撮影) © UNICEF/UNI867995/Noel
報告書「チャイルド・アラート」は、避難によって他の危機が深刻化している実態にも言及しています。避難拠点の33%以上には保護に関する基本的なインフラが整っておらず、子どもや女性が暴力や搾取、虐待の危険にさらされています。また、多くの学校が避難所として使用されており、約50万人の生徒の教育が中断されています。
ハイチでは複合的な危機が続いており、現在330万人以上の子どもが人道支援を必要としています。100万人以上の子どもが危機的なレベルの食料不安に直面しており、今年はおよそ28万8,544人の5歳未満の子どもが急性栄養不良に陥ると予測されています。武装集団はポルトープランスと幹線道路の85%以上を支配しているため、人々は食料やヘルスケア、保護を受ける手段を断たれています。また、人道支援の担い手たちは、支援が最も必要とされる人々にたどり着こうとする中で、深刻な危険にさらされています。
ユニセフは今年、パートナーとともに8万6,000人以上の子どもの消耗症を治療し、11万7,000人にヘルスケアを提供し、14万人に安全な水を届けました。また、2024年以降、ハイチ政府とユニセフは「Protocol for the Handover of Children Associated with Armed Groups(武装集団に関与した子どもの引き渡しに関する議定書)」の枠組みに基づき、178人以上の子どもを武装集団から解放し、彼らの社会復帰の支援をしています。
ユニセフは、避難を強いられた子どもたちへの命を守る支援と保護を拡充するため、国際社会に対して緊急支援を呼び掛けています。安全な避難場所、家族の追跡と再会支援、心理社会的支援、および保健医療・栄養・教育・安全な水と衛生設備が利用できる環境などが求められています。
しかし、ハイチに対するユニセフの「子どもたちのための人道支援計画(Humanitarian Action for Children)」の資金は著しく不足しています。今すぐ資金が投入されなければ、きわめて重要な支援活動が制限され、子どもたちは必要不可欠な保護とケアを受けられなくなってしまいます。
ラッセル事務局長は次のように訴えています。「ハイチの子どもたちには、一刻の猶予もありません。すべての子どもと同様に、彼らにも安全で健康に、平和の中で生きる権利があります。今こそ、ハイチの子どものために私たちが行動を起こすときなのです」