最低賃金の引き上げや人手不足を背景に、パート・アルバイトの時給水準が上昇している。そんな中、採用・定着を「時給」だけで考えるのではなく、福利厚生を含めた「待遇全体」で考えようという動きが出てきた。
食事補助サービス「チケットレストラン」を展開するエデンレッドジャパンが提言したのが、「時給・給与+福利厚生」を組み合わせる「ハイブリッド待遇」だ。
同社が9月に実施した調査では、時給を引き上げた企業の82.6%が「時給の引き上げだけで採用・定着に対応していくことに限界を感じる」と回答(左図)。一方、パートタイマーの88.7%が、仕事内容や時給が同程度なら「福利厚生が充実した勤務先を選びたい」と答えている(右図)。
最低賃金の引き上げによって時給水準そのものが底上げされる中、企業にとっては時給だけで他社との差をつけることが難しくなり、採用後の定着まで含めた人材確保を「賃金競争」だけで続けることにも限界が生じている。こうした課題に対し、賃金の適切な確保を前提に、福利厚生も組み合わせて働く人の待遇を改善していこうというのが「ハイブリッド待遇」の考え方だ。
■「時給か福利厚生か」ではなく「時給+福利厚生」
「ハイブリッド待遇」は、時給・給与による待遇改善に加え、食事補助などの福利厚生を組み合わせ、「賃金」と「賃金以外の待遇」の両面から働く人を支えるというもの。
ポイントは、福利厚生を賃上げの代わりにするものではないことだ。「時給か、福利厚生か」ではなく、適切な賃金を確保したうえで福利厚生も組み合わせ、待遇全体を充実させていく考え方となる。
背景には、最低賃金の引き上げなどによって賃金水準そのものが底上げされる中、企業にとって「時給の高さ」だけでは他社との違いを打ち出しにくくなっている状況がある。そこで、働きやすさや日々の生活への支援など、賃金以外も含めて「どのような待遇を提供できるか」が、人材確保を考える新たなポイントになりつつある。
■髪色自由、家族支援、食事補助……広がる「時給+α」
実際、企業ではパート・アルバイトを含む従業員に対し、時給以外の待遇を充実させる動きがみられる。例えば、働き方の自由度を高める取り組みのほか、従業員本人だけでなく家族も施設の割引などを利用できる制度、従業員やその家族の食費を支える制度など、その内容はさまざまだ。
なかでも物価高が続く中、日々の生活に直結する福利厚生の一つとして挙げられているのが「食事補助」だ。
■パートにも食事補助、導入企業も
実際にパートタイマーへ食事補助を導入する企業も少なくないという。
例えば、部品検査を手掛ける株式会社サニクロ(山梨県)では、従業員の8割以上が子育て中のパートタイマー。同社は、パート従業員には「年収の壁」もあり、単純な給与アップだけでは解決できないケースがあることから食事補助を導入しているという。
同社からは、食事補助が他社との差別化となり、採用面接でも話題に上がることがあるとの声も出ている。
■「第3の賃上げ」から「待遇全体」へ
エデンレッドジャパンではこれまで、福利厚生を活用して従業員の実質的な手取りを増やす「第3の賃上げ」を提唱してきた。2026年9月時点では、その趣旨に200社以上の企業・団体が賛同している。
今回の「ハイブリッド待遇」は、その考え方をさらに広げ、賃金だけでなく福利厚生を含めた「待遇全体」から働く環境を考えようというものだ。
最低賃金の引き上げによって時給水準が底上げされる中、企業の人材確保をめぐる競争は「いくら払うか」だけではなく、「どんな待遇で働ける会社なのか」へと広がっていきそうだ。