キリストにスポットライトが当たっているかのような光の効果、劇的な一瞬を切り取った動きのある構図は、生々しいほどのリアリティを呼び起こします。

とりわけ土気色をして血を流すキリストの遺骸が十字架から降ろされる「キリスト降架」は、思わず鳥肌が立ってしまうほどの迫力。必ずしもポジティブな印象を与える絵ではないのに、それでも見ずにはいられないのです。

アニメ「フランダースの犬」の最後、ようやく「キリスト降架」を目にしたネロは、こう言います。―「ああとうとう見たんだ」 「ああマリアさま、僕はもう思い残すことはありません」

それぞれの絵画の前には、詳しい解説(日本語あり)も用意されています。アントワープにやってきたら、ネロが憧れ続けたルーベンスの傑作をじっくりと堪能してください。

・大聖堂前のネロとパトラッシュ像

大聖堂の前には、2016年にお目見えしたネロとパトラッシュの像があります。デザインを手がけたのは、ゲント在住のアーティスト、バティスト・フェルムーレンさん。

日本で放映されたアニメに登場する彼らとはイメージが異なるものの、幸せそうに眠っているかのようなネロとパトラッシュの姿が目を引きます。

「フランダースの犬」を見たことがある人は、悲しい物語の結末を思い出し、「せめて天国では幸せであって!」と願わずにはいられないかもしれません。

・「フランダースの犬」を有名にしたのは日本人!?

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