日本政府が13日、 「漫画村」「Anitube」など3つの海賊版サイトに対するアクセス遮断をインターネット事業者(プロバイダー)が自主的に実施することを促す決定をした。これに対し、 ジャーナリストの津田大介氏が代表理事を務める一般社団法人インターネットユーザー協会(通称MIAU)が11日に発表した共同声明が話題を呼んでいる。
声明では今回のようなブロッキングが「国民の憲法上の権利である通信の秘密を侵害し、電気通信事業法とも齟齬を来た」すとして、 適切な司法手続を経ずにネット上の情報流通が制限される懸念を表明。その上で、「 クリエイターへの適切な対価の還元やコンテンツへの多様なユーザーニーズに合わせたサービスを積極的に開発していくことが、こうした海賊版サイトの最終的な撲滅へとつながる王道」であると主張している。
これに対してソーシャルメディア上では「暫定対応でブロックは分かりますが、上部だけの対応ですね。根本対策する為の議論が見えない」「今の政府なら間違いなく、都合の悪いサイトやブログのブロックに悪用するでしょうから」など、その内容に好意的な声も出る一方、津田氏に対しては「違法にアップロードされた音楽等を入手するためのツールの使い方を雑誌で連載してたあなたが言っても説得力が」という気になる声も噴出している。
著書『Twitter社会論』など、ネット社会の現状を分かりやすくメディアに伝える役割で、広く世に知られることとなった津田氏だが、実は著作権無視の違法コピーの流通方法や、Winnyなど匿名ネットワークの使い方を解説するライターとして生業を立てていた時期があったことはあまり知られていない。
いわば、津田氏は「割れ厨」と呼ばれる違法ダウンロードや違法コピーの手段を広めた張本人であるにもかかわらず、今回のような海賊版サイトが国家的な問題になった時にこれを糾弾したり、政府の対応に物を申したりできる立場や経歴なのか、という批判の声も上がり続けている。
例えば、かつて違法ダウンロードブームを牽引した雑誌 『ネットランナー』(ソフトバンクパブリッシング社)の2003年7月号で津田氏は、「注目度ナンバーワンファイル共有ソフト! Winny2完全解説 コピれないCDをコピれ! 会社のセキュリティを突破して隠密メールを受信しよう! 悪ふざけでは済まされない凶悪いたずら大全集!」などと銘打った特集の編集や記事の執筆に参加している。また、 2003年には著作権物の違法な流通に用いられたWinMXについて、その使い方を解説した「だからWinMXはやめられない」を自らの名義で上梓している。
いずれも津田氏により執筆されている内容は違法ツールの使い方や無断コピー流通の方法についての解説で、見ようによっては「漫画村よりも悪質な違法コピーや違法流通を開設していたのが津田大介」と指弾されても致し方がないだろう。
ネットランナー:http://www.itmedia.co.jp/internet/runner/0307/sp1/
だからWinMXはやめられない:https://www.amazon.co.jp/dp/4844318004
こうした過去について津田氏は2010年、自身のツイッター上で「ペンネーム使わず本名で書いてたんだよね。それは俺なりのけじめだったし、金稼がなきゃ生きていけないっていう足跡として全部オープンにしてきた」と釈明している。
https://twitter.com/tsuda/status/19669575876
これらの違法コピー解説本を出していた過去は黒歴史であった、と津田氏本人が回想するのは自由だが、MIAU代表理事や早稲田大学特任教授として、立場をロンダリングして立場表明するのは「泥棒が泥棒を語る」ことと大差ないのではないだろうか。
この釈明から約8年たった今、津田氏は冒頭の共同声明で著作権者の財産権を回復するためには「適切な司法手続」に則って「『漫画村』のような悪意あるサービスの撲滅」を目指すべきである、と述べている。”著作権を軽んじた”と強く糾弾されかねないかつての著作活動からの「転身」となるが、津田氏のような高名なジャーナリストであっても、生活状況や立場によって意見や言動が変化するという事実を、我々はどう評価するべきだろうか。