大気汚染がひどいと言われていた北京だが、汚染度が著しく低下していると報道された。ただし、中国全体の汚染レベルは少しだけ改善したに過ぎないらしい。
中国の工場は北部に集中している。南部は、農業が盛んであり、北部に比べて汚れていない。
僕は2017年の夏、中国の南部に旅行に行った。緯度は沖縄より南なので日差しは暑い。ガイドと魚のレストランで飯を食う。水槽の中で泳ぐ魚を選ぶと、捌いてくれる。
テーブルは屋外の街路樹の下に置かれている。日陰だとだいぶ涼しい。
金属の皿にぶつ切りにして甘辛く炒められた魚が出てきた。牛でも犬でもだいたい同じ味付けだった。
ビールは漓泉ビールという桂林にあるビールメーカーのものだったが、さっぱりしていて美味しかった。
桂林出身のガイドと話す。
「中国北部の人たちは、良い空気を吸うために中国南部に観光に来ますね。ただ玉林は観光地ではないのであまり来ません。実は私もはじめて来ました」
たしかに街を歩いたが、デパートや市場はあるもののよその地域からわざわざ見に来るようなものはあまりなかった。
「ただ唯一の観光地が雲天文化城です。せっかくだから行ってみますか? 大きな仏像があります」
と誘われた。仏像とはちょっと地味だが、せっかくなのでタクシーで足を運んでみることにした。
走っていくと、遠くに派手な建物が見える。そして建物の中には金色のギラギラした像が目に入った。僕のイメージしている仏像とはだいぶ違った。
「あれは仏陀なんですか?」
と聞くと「よく分からないです。福の神じゃないですか?」
と言われた。後で調べてみると弥勒菩薩(マイトレーヤ)の仏像とのことだった。僕のイメージする弥勒菩薩は、細身でつるんとしたイメージだったのでこれまた違った。
帰国後知ったのだが七福神の一人である布袋様は弥勒菩薩と同一視されることがあるらしい。上半身ハダカでハゲでデブの布袋様だと言われれば納得がいく。
タクシーの運ちゃんが聞いてもいないのに、いろいろと説明してくれた。
「台湾の大金持ちが作った屋内の像としては世界最大なんだぜ。7年前にできたんだけど、ここいらでは唯一の観光施設だ。地元の人はほとんど誰も行かないけど」
そういうとケラケラと笑う。
施設が近づいてくると、いかに巨大な建物なのかが分かってきて鳥肌が立った。
受付でチケットを買う。150元(2500円くらい)とまあまあ高い値段だった。
建物の周りには庭園が広がり、巨大な亀、地球に乗った馬、バカでかいニワトリ、こま犬のような動物……などが並べられている。どれもきらびやかだ。ちょっと悪趣味に見えるくらい派手なのが楽しい。しかしこんなにデカい施設なのに、観光客はほとんどいなかった。なんだか得体の知れない夢の中にいるような気がしてきた。
そして建物の中に入る。
建物内も広くて立派だ……だが暗い。電気がついていないのだ。困りつつも、並べられた翡翠の像などを見ているとヨボヨボの警備員がやってきた。そして電気をつけてくれた。
あまりに観光客が少ないので、人が来た時だけ電気をつけるシステムになっている。こんな何十億かかったのか分からない施設なのに電気代はケチるんだ!! とビックリした。
木の彫り物が並べられたフロア、中国の伝統的な衣装が並べられたフロア、などが続く。つまり、この施設を作った台湾人の金持ちの自慢の施設なのだ。
しかし人はいないし、電気もついていない。あんまし自慢できてないようである。
大仏のあるフロアは工事中で入れなかったのだが、横から像を見上げると、かなりこわかった。笑顔のまま、世界を滅ぼしそうな化け物に見えた。
漫画『ガンツ(奥浩哉)』の世界観の敵だったら、絶望感しかないな……と思った。
と、玉林唯一の観光地と言われる『雲天文化城』を巡ったのであった。興味のある人は行ってみてはいかがだろうか? 最低でも10万円はかかりますが……。