タリバンが政権を掌握したアフガニスタンでは、女性に対する制限が数カ月続いている。社会参加や教育を受ける機会が奪われたほか、2022年12月末にはNGOで働くことが禁止となった。こうした状況を目撃してきた国境なき医師団(MSF)は、タリバンが同国の社会生活から女性を排除していることを強く非難し、医療施設における女性スタッフ就労の必要性を訴える。
■活動に欠かせない女性スタッフの存在
「MSFの医療スタッフの51%以上は女性です。900人近い医師、看護師、その他の専門家が、何千人ものアフガニスタン人にできる限りの医療を提供するために、日々活動しています。MSFの活動は、彼女たちなしでは成り立ちません。NGOでの就労禁止は、不利益しかもたらさず、女性を社会から追放するための新たな組織的試みであることは明らかです」と、アフガニスタンでMSFの現地代表を務めるフィリップ・リベイロは、今回の禁止令について懸念を示す。
人口の大半が人道援助に依存し、失業率の上昇に伴い極度の貧困に直面しているアフガニスタンでは、女性スタッフは人道援助や医療活動において重要な役割を担っている。規模の大小にかかわらず、いずれの組織も彼女たちの参加なしには、現地で必要とされている援助を届けることはできない。
■弱い立場の人びとがさらなる困難に直面
今回の禁止令で最も大きな影響を受けるのは女性や子どもといった社会的弱者だ。今後は、医師の診察を受けることはさらに困難になる。目下のところ、MSFと現地保健省の管理下にある医療施設では女性スタッフも支障なく働き続けており、MSFの活動は全て維持できているが、この現状を変えてはならない。
女性の就労を禁止することは、人道的・医療倫理のあらゆる原則に反する。「医療施設での女性の就労が禁じられる一方で、イスラム教の戒律に従って女性からしか治療を受けられないとしたら、女性が医療を受けることは事実上不可能になります。その結果、MSFを含めていかなる医療機関もアフガニスタンで医療を提供することができなくなります」とリベイロは指摘する。
「ホースト産科病院に勤める医療スタッフの90%以上は女性で、毎月1,800人の赤ちゃんの分娩を介助しています。この命令が完全に実施されれば、より多くの母親が、産前産後の診療を受けるための障壁にぶつかるでしょう。医療を受けようにも行き場がなくなってしまうのです」
■全ての人が医療にアクセスするために
2022年3月の中等教育学校の閉鎖に続き、高等教育省は12月初めに私立・公立大学への女性の入学を禁止する決定を発表した。この決定が、長期にわたる状況悪化につながるのは間違いない。「アフガニスタンの医療制度は、人びとの基礎的なニーズを満たすのも難しくなっています」とリベイロは話す。「今でさえ、必要な医療を受けられていないとしたら、医学部入学希望者の半数が認められなくなった結果、何が起こるでしょうか。ホースト州の活動では、既に州の全域で不足している婦人科医を含めて、必要なスタッフを採用するのが困難になっています。女性医師ともなればさらに必要とされているのです」
全ての人が必要な医療を受けられるようにするには、性別に関わらず全ての人が勤務できる必要がある。そのためMSFは、女性スタッフを含めた現在の活動チームを維持することで、医療を必要とする全ての人びとに医療を提供していく。