2020年代中盤に入り、日本の政治と経済において、ある種の「信頼の転移」が起きつつある。盛り上がる参院選を控え注目したいのは自民党の支持基盤の崩壊と、ビットコインをはじめとした仮想通貨市場の上昇が、時を同じくして進行しているという事実だ。

一見、無関係に思える両者の間には、実は共通する背景がある。それは、「国家への信頼の後退」と「非中央集権への希求」だ。

■自民党の「長期支配」が崩れ始めている

先の都議選で自民党は大惨敗を喫し、7月20日に投票日を迎える参院選でも自公で過半数割れという予測が主流になっている。

2023年以降、自民党は相次ぐ不祥事や派閥問題で国民からの信任を大きく失った。特に若年層においては、「どの政党も信用できない」という政治的シニシズムが広がっており、旧来の与党支持層すらも流動化している。

この傾向は単なる政党の移り変わりではなく、「中央政府そのものの正当性への懐疑」にまで至りつつある。これは政治の構造変化であり信頼の構造変化だ。

一方で、2024年から2025年にかけて、ビットコイン(BTC)は再び大きく高騰した。表面上の理由は半減期によるルーティンやETF承認、米国の金利政策、トランプ大統領による強烈な後押しなどだが、より深いレベルで見ればビットコイン価格の急上昇は「中央への信頼の崩壊」が背景にあるのは間違いない。

ビットコインは中央銀行も政府も必要としない。つまり、信用が国家ではなく技術・テクノロジーに移っているという象徴だ。この構造は、現在の日本政治の不信感とどこかでつながってはいないか。

■国家の弱体化と非国家資産の台頭

日本はこれまで、世界的に見ても「政府を信じやすい国民性」が際立っていた。しかし近年、若い世代を中心に「国家は自分を守ってくれない」「年金も信用できない」「円が安全とは限らない」といった感覚がじわじわと広がっている。

このようなマインドセットの中で、「自分で資産を守る」「国家に頼らない」という発想が台頭し、そこで選ばれた選択肢がビットコインだったとしても、不思議ではない。

もちろん、ビットコインの価格と政権支持率に直接の因果関係があるとは言い切れない。ただし、両者が同時に動いているのは、現代人が共有する深層心理「中央集権に対する不信と疲労」が背景にあるからではないか。

国家と政党が提供してきた「信用」という社会インフラが崩れるとき、人々は新たなインフラを求める。その行き先が、技術に支えられたビットコインであり、DAO(分散型自立組織)であり、分散化された社会的評価のシステムであるとすれば……。

これは、ただの資産価格の話ではない。民主主義と資本主義が交差する「信頼のインフラの再構築」に関する、きわめて政治的な選択でもあるのだ。

自民党の凋落とビットコインの急上昇は共通する「中央への不信」という深層でつながっている。これは現代日本における「信用の地殻変動」であり、我々はその断層の上に生きている。