11月半ば以降、ビットコインの価格が40%も下落して、本格的な冬の到来を実感している投資家は少なくないだろう。だが、仮想通貨の基礎をなすブロックチェーン技術を見ると、歴史はスパイラルを描いて進むというマルクスの言葉を思い出さずにいられない。たしかに今、仮想通貨の価格は右肩下がりだが、この業界そのものは力強い前進を続けていることを、データは示している。

その根拠は特許出願にある。LongHashはグーグルパテントを使って、この1年間のブロックチェーン関連特許の出願動向を調べてみた。すると、その件数は着々と増えていることがわかった。つまりこの分野の技術屋たちは、仮想通貨の価格動向など目もくれずに、研究開発に励んでいるのだ。

さらにLongHashは、これらの特許の出願国を調べてみた。

世界全体で見ると、2017年1月以降のブロックチェーン関連特許出願は3552件。このうち米国が1264件(36%)を占めてトップに立ったことは、ある意味で驚きではないだろう。2位は中国で1061件(29%)だった。つまりブロックチェーン技術の研究者は、米国と中国に集中している可能性が高い。

では、これらの特許を実際に保有しているのは誰か。中国出願を見ると、アリババ集団と中国人民銀行デジタル通貨研究所の名前が目立つ。この2つの組織はそれぞれ、中国における2017年1月以降のブロックチェーン特許出願の20%を占めた。3位につけたのは、中国聯合網絡通信集団(チャイナユニコム)で17%を占めた。

一方、米国ではIBMが78件(6.2%)でトップに立った。2位はバンク・オブ・アメリカで36件を保有する。

これらのデータから、興味深いポイントが4つ浮かび上がってくる。まず、中国政府は本土での仮想通貨取引を全面禁止しているが、その中央銀行(中国人民銀行)は、ブロックチェーン技術の開発を自ら強力に進めていることだ。中国の金融当局は、仮想通貨について懸念は抱いていても、ブロックチェーン技術の潜在性をはっきり認めているのだ。

第2に、金融業界がかなりの数のブロックチェーン関連特許を取得していることだ。このことは次世代のフリクションレス決済システムを確立するうえで、ブロックチェーンが有力な技術であることを示唆している。

第3の注目点は、アリババの存在だ。巨大なeコマース帝国を築いたアリババは、今度はブロックチェーンを支配しようとしているのか。アリババは国際決済の方法として、ブロックチェーン技術を使った2点間決済を採用する可能性が高いが、もっと独創的な活用法も登場することを期待したい。

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