これらのステーブルコインが生きるか死ぬかは、明らかに、監査の信用性にかかっている。では、トラストレス(信用できる第三者を仲介する必要がない)のブロックチェーンは、ステーブルコインにどのような価値を与えるのだろうか。

ステーブルコインとパーミッション

暗号化されたデジタル資産は一般に、政治性がなく、特定の管理者の承認がいらない点が重視されるが、これらの特徴は明らかに、規制当局の承認を得たステーブルコインには当てはまらない。最近新しく発行されたステーブルコインの細則には、自分たちが(あるいは規制当局が)望まない行為を防ぐために、不正なサイトなどのブラックリストを作成すると記されている。

テザーが2017年に約3000万ドル分のハッキング被害に遭って対策を講じた際も、台帳が自分たちの管理下にあって、書き換えることもできるという事実が明らかになった。

したがって、ステーブルコインがトラストレスではないと言うだけで、パーミッションレスでもないとは言えない。だからこそ疑問なのだ。ステーブルコインにパブリックブロックチェーンは必要なのだろうか。

「パーミッションレス」の真価は

ブロックストリームが開発したビットコインのサイドチェーンのリキッドや、イーサリアムのパーミッションド(特定の管理者が承認するシステム)チェーンのフォーク(分岐)のように、連邦制で合意を形成するブロックチェーンは、法定通貨に裏付けされたステーブルコインの発行に最も適しているかもしれない。今年1月にはクリプトガレージが、リキッドネットワークを利用して日本円に連動するステーブルコインの実証実験を始めていることを明らかにした。

つまり、法定通貨に裏付けられたステーブルコインは、そもそもトラストレスでもパーミッションレスでもない。したがって、コストをかけてまで分散型のパーミッションレスなブロックチェーンを利用する恩恵は、ほとんどないのだ。

ビットコインやイーサネットのようなパブリックブロックチェーンは、署名者の連邦制管理されているブロックチェーンよりコストがかかる。連邦制のブロックチェーンは、フルノード(すべてのトランザクションを所有して検証するノード)の運営に必要な資源が少なくて済むため、ほぼすべての参加者が過去のイベントを検証できる。

さらに、パーミッションドブロックチェーンは、特定の公証人のグループが管理しながら、過去のトランザクションに関するデータを定期的に破棄している。台帳は彼らの管理下にあるのだ。つまり、パーミッションドチェーンでフルノードの検証に必要な資源は、典型的なパブリックチェーンに比べてはるかに少なくて済む。

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