「この期に及んで、なんだっ! この記事はっ!」と思わず叫んだ。怒りを通り越してバカさ加減にあきれた。この記事に書いてあることは、小池知事の単なる思い付きのパフォーマンスによって、移転延期が決定されて以来、テレビをはじめとしたマスメディアにさんざんオモチャにされていた時に、すでに話題になっていた話ばかりだ。そしてそのほとんどは、すでに解決済みの話だ。

豊洲の使い勝手に難あり=築地業者、物流停滞など不安
:時事通信
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018050200648&g=eco#cxrecs_s

それを移転間際になって、また蒸し返すなんていうのは、移転を前に不安を抱える市場業者たちの気持ちをもてあそび、いたずらに世論を煽る下品で低俗な記事だと言わざるを得ない。

皆さんは、ご自分の職場で配属変更、営業所や会社、新社屋の移転等、今までの自分の職場環境が変わることに対し、まったく不安なく受け入れられるだろうか? まったく不安がない。明るい未来しかない!と考えられる人は極まれで、たぶんほとんどの方が、一抹の不安を抱えるのではないだろうか。また家を引っ越した時、その新しい家、マンションの部屋が、100%使い勝手が良いと思って引っ越せる人が、一体どれだけいるのだろうか。

唸るほどカネを持っていて、設計段階から口を出し、建築現場にも出向いて細かい指示をしたのならいざ知らず、ほとんどの人は引っ越してみてはじめて解る使い勝手の不便さを、甘んじて受け入れるのではないだろうか。またその不便さにいつまでも文句ばかり言ってないで、その不便を快適に変える工夫をするのではないだろうか。

職場の話に戻す。新社屋なりに移転をした時、自分の働くスペースが狭くなっていたり、たとえ広くなっていたとしても、使い勝手が悪かったとしたら、どう考えるのだろうか?

上司に強く訴えて、環境を変えてもらうことを要求するのも一つの方法だ。でもだからと言ってその環境を「ハイ、そーですか!」と、大切な経営資源であるカネを使って変えてくれるような親切な会社は、ほとんどないのではないだろうか。

その時、皆さんは会社や上司に対し文句を言い続けますか? もし言い続けたとしたら、同僚から「アイツはわがままなガキみてぇなヤツだ」と陰口を言われるのが、オチだと思う。普通の人なら、そんな自らストレスをため込むようなバカなことは、非生産的で時間の無駄だと考えるのではないだろうか。

大人はその与えられた環境の中でベストな仕事が出来るように、その場で出来る“最大限の工夫”をし、自分にとって仕事のしやすい環境に自ら近づけていくのではないだろうか。不便なことをそれぞれが好き勝手に言い出し、それを他人のせいにしていたらキリがない。

■議論済みの問題で不安を煽る無責任記事、市場の知恵と工夫を見くびるな

実は2年近く議論されてきた豊洲市場の使い勝手の悪さって、こーゆー話に過ぎないと思ってる。またこの記事に書いてあることは、すべてそこに働く人たちの「知恵と工夫」で何とか乗り越えられるものばかりだと思う。現在の狭くて古い築地でやっているのだから、豊洲で出来ないわけがない。みんなその世界のプロ集団が市場業者だ。本気を出せば多少の不便はどうってことはない。

オレも毎日築地市場でターレに乗っている。今、働いている人たちは、はじめからそうだったので何とも感じてないが、老朽化した築地市場の路面は凸凹だ。ちょっとスピードを出して走れば、その路面ギャップに積載物がジャンプしてしまうような路面だ。だから自然とゆっくり走るようになる。時間に追われている時は本当にイライラする。

でも移転することによって、凸凹がない路面を走れるようになるのだから、それだけでも場内物流は効率的になると思ってる。まぁこんなことをいうと「凸凹がなくなってスピードが出るようになると事故が多発する」と言わるけどね。

オレ個人はこのような立派な豊洲市場を建ててもらって、その上安価で使わせていただけることに感謝しかない。

その代りにといったらおこがましいが、我々市場業者の使命である「生産者を守り」「消費者には安心できる生鮮食料品の安定供給」という大事な責務に邁進する覚悟を新たにしている。またこの使命をキチンと果たすことが、我々に与えてもらった環境に対しての義務なのだと思っている。

いずれにせよ、ココまで来たら「行って、やってみなけりゃわかんねぇ」ってのが本音だ。しかし開場前の豊洲新市場をつぶさに見て歩いた限り、それぞれの「知恵と工夫」で乗り越えられそうにないことは、ほぼ皆無だとオレは思ってる。

冷静に考えれば誰でも解ることなのだが、90年に一度の歴史に残る大事業である「市場移転」を前に、中で働く人たちは否が応にも不安になってしまう。そりゃぁそうだ。じいさん、オヤジの代から変わらず、ずっと築地市場でやってきたンだから。市場業者に限らず、人というのは変化を恐れてしまうものなンだと思う。

ただでさえ不安になりやすいというのに、さらに不安に陥れようとする中身のない空っぽな無責任な煽り記事に対し、当事者の一人として怒りしか感じることができない。

本稿は時事通信社に強く抗議の意を示すものである。