TOKIOの山口達也氏が、女子高校生への強制わいせつ罪で書類送検され、起訴猶予処分になった事件は各界に衝撃を与えたままだ。3日、この事件を受けて都内で山口以外の四人のメンバーが記者会見を開き、現在の気持ちと謝罪の言葉を口にした。また所属事務所のジャニー喜多川社長がお詫びのコメントを発表した。

SMAPや嵐といったジャニーズの人気アイドルと並び、TOKIOもまた日本の国民文化を支える重要な柱の一つであったことは間違いない。TOKIOとしてだけではなく、個々のメンバーのタレント活動もそれぞれが個性的でありながら、その活動を目にした人たちは彼らの人格的な安定性、高潔性とでもいうべきものを目にしてきたと思う。今回の四人の記者会見でも言及されていたように、3.11後の福島での活動は特筆すべき貢献だった。

いまも福島産の農産物などをめぐる悪しき風評は深刻である。筆者の目にするSNSでもしばしばそのようなデタラメを目にすることがある。そしてその流し手はどんな批判にも懲りることなく続けている。このような深刻なバイアスに対して、一貫して強く静かに抗弁していたアイドルは、TOKIOだろう。

福島県の農産物の安全性を訴えるCMに2012年から現在まで出演を続け、そしてそのギャラは「恩返し」ということでタダだという。それは福島県双葉郡浪江町にある<DASH村>での、彼らの農作業での収穫や<村>の様々な特産品の製作などは、まさに福島の地が与えてくれたものだからだろう。もちろんその地での様々な人と人との出会いこそが本当の「恩」の根源であることは言うまでもない。この日本的な「恩返し」あるいは「人情」などは、いまの日本文化・社会で徐々に失われている代表的な心情だろう。それをTOKIOのメンバーたちはテレビという最も営利性の強い世界で一貫して自ら体現していたのかもしれない。

この意味で、TOKIOは「バンドで演奏しながら歌う」というコンセプトや、ガテン系のイメージとともに、社会的アイドルの印象が強い。番組自体への評価が分かれるだろうが、24時間テレビ 「愛は地球を救う」にはジャニーズの人気グループが歴代、司会などで参加している。TOKIOもまたその経験があるが、中でもこの番組の注目点であるチャリティーマラソンに、ジャニーズの中で唯一、二回(山口達也と城島茂の両氏)参加していることも「社会的アイドル」の印象を強めているのではないか。

ただ華やかであるよりも、同時に何か日本株式会社を基盤で支える実直な人たち。それがTOKIOのイメージかもしれない。それだけに今回の事件はそのイメージも含めて、メンバーやファンの心情を直撃した。正直、TOKIOは最もこの種のスキャンダルに縁遠いアイドルのひとつと思っていただけに、今日までどうコメントしていいのか戸惑ってしまった。

ジャニーズのアイドルたちは、アイドルとしての長寿化(長期化)に成功しつつあった。だが、一昨年のSMAPの解散、そして今回のTOKIOの深刻な問題と、日本の男性アイドルの長期化モデルが深刻な見直しを迫られているのかもしれない。この見直しの行方は現段階ではまだわからない。