ボスポラス海峡を挟んでヨーロッパとアジアに分かれるトルコ最大の都市、イスタンブールは、「東西の文明の交差点」と例えられる通り、エリアごとに全く違う魅力を持つ都市です。

たくさんの観光スポットがありますが、今回はビザンティン美術の傑作、黄金のモザイク画が残るカーリエ博物館をご紹介しましょう。

カーリエ美術館は、トルコ最大の都市イスタンブールの旧市街の外れにあり、周辺にはテオドシウスの城壁以外にこれといった観光スポットがないため、観光に際してはなにかと後回しにされがちなスポット。

しかし、この博物館にはビザンティン美術の傑作とも評されるモザイク画やフレスコ画が残されているのです。

いまでこそ博物館として一般公開されていますが、もとは5~7世紀くらいにコーラ修道院として建てられた建物。

「コーラ」とはギリシア語で「田舎」「郊外」を意味し、その名前の通り、修道院はコンスタンティノポリス(イスタンブール)の中心から遠い北西部の丘の上に建築されたのです。

その後、オスマン帝国が東ローマ帝国を滅ぼした「コンスタンティノープル攻略」以降、修道院はイスラムの寺院として使用され、カーリエ・モスクと改称されました。

13~14世紀に描かれたビザンティン美術の傑作とも評されるモザイク画は、偶像崇拝を禁止するイスラムではご法度のため、オスマン帝国時代は漆喰で塗りつぶされており、長い間この世から存在を消されていました。

しかし20世紀になると、アメリカのビザンツ研究所による調査で発見され、現代に生きる私たちも当時の素晴らしい美術画を目にすることができるようになりました。

聖書を元に、黄金に輝くモザイク画は180以上の場面、フレスコ画は80以上の場面を構成しており、壁面から天井まで、余すところなくビザンティン美術を堪能することができます。

ところどころ欠けている部分もありますが、それでもビザンティン美術の素晴らしさは十分に伝わってきます。

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