いまでは日本でもお馴染みとなっているケバブは、トルコを代表する料理の一つです。ケバブとはトルコ風の焼き肉のことで、スパイスとひき肉を混ぜて串刺しにして焼いたものや、直火焼きして薄くそぎ落としたものなど、ケバブと一口に言ってもたくさんの種類があります。

数あるケバブの中でも、たっぷりの溶かしバターをかけ、さらにヨーグルトと一緒に食べるちょっと変わったイスケンデル・ケバブは日本ではまだあまり知られていないかもしれません。

イスケンデル・ケバブは、19世紀の後半にトルコ北西部の街、ブルサで考案された料理で、いまではブルサの名物料理となっています。

発明したのはメフメトオウル・イスケンデル・エフェンディです。スパイスなどであらかじめ味をつけた肉を垂直な串に巻き付けてあぶり焼きにし、表面の焼きあがった肉の層を薄くそぎ落として食べる、いわゆるドネル・ケバブを、ピデというトルコの薄焼きのパンの上に乗せ、さらに溶かしバターとトマトソースを流しかけ、ヨーグルトを添えた一品を考案しました。

この料理はたちまち好評を得て、ブルサのみならずトルコ中に広まり、いまではトルコの肉料理を代表するものの一つにまでなったのです。

現在ではブルサ以外でもイスケンデル・ケバブを食べることができるようになりましたが、本格的な正真正銘のイスケンデル・ケバブは、ブルサのウル山で採取されるタイムを食べて自然豊かな環境で育った羊の肉を使ったものとされています。

せっかくなら、本物のイスケンデル・ケバブを食べてみたい!というかたは、ブルサ中心部にある「ケバプチュ・イスケンデル」という老舗のレストランがおすすめです。

メフメトオウル・イスケンデル・エフェンディの次男の家系が代々受け継いでいるレストランで、創業年はイスケンデルがケバブを考案した1867年となっています。

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