東京駅と丸の内周辺エリアで新郎新婦がドレスやタキシードを着て写真撮影するウェディングフォトが人気となり、その中でも最も注目を集めているフォトグラファーがいる。
写真のオリンピックとも呼ばれる「WPC(ワールドフォトグラフィックカップ)」に2年連続で日本代表として選出され、2024年には最終選考にもノミネートされて世界トップ10に選出されたのが、ウェディングフォトグラファーの池内基曜(いけうちもとてる)氏だ。
従来は技術的な問題などから敬遠されていた、夜間のロケーション撮影に取り組んでドラマチックな写真を撮影することで高く評価され、現在の撮影予約は半年待ちという池内氏。
池内氏にウェディングフォトグラファーとなった経緯、写真を撮る際のこだわりなどについてインタビューした。
──池内さんの経歴を調べて驚いたのですが、もともと宝石商や経営コンサルタントなど、写真とまったく関係ないお仕事をしていたそうですね。
コンサルティング会社を運営する中で、ドレスのレンタル事業に参入したんです。その事業の立て直しをはかる中で、ウェディングフォトグラファーに転身しました。意を決して「ウェディングフォトグラファーになる!」と決断したというより、なりゆきでした。
ウェディングフォトグラファーになること自体に葛藤はありませんでしたが、初期段階は不安でいっぱいでした。活動を始めた3ヶ月後には一軒家を購入し、長女の出産も控えているという状況だったのですが、当時の事業の失敗で貯金が底をついていたこともあり、娘の出産費用を切り崩してプロ用の写真機材を購入するような状況だったんです。
ただ、妻や親族には「1年で結果が出なかったらサラリーマンに戻る」と約束していたのですが、今までの創業経験などから不安とは裏腹に根拠のない自信も感じていました。
──写真の技術はどうやって学ばれたのでしょうか?
写真は趣味程度の経験しかなく、独学で学びました。「学びたい人を見るだけで、6~7割のクオリティまで物まねできる」というのが僕の一番の特技で、独学における苦労は特にありませんでした。
「業界ならでは」のような先入観がないため、自分の思い描いているトライ&エラーを常にできたのも独学ならではのメリットだったと思います。
現在は自分のスキルを伸ばすために、写真セミナーに参加していますし、世界コンペティションに挑戦している先駆者の後に続いて自分も挑戦し続けることがスキルを伸ばす良い指標になっています。
──ウェディングフォトグラファーとして活動を始めて、どういう点で「自分はウェディングフォトグラファーに向いている!」と感じましたか?
「私の写真のセンスです!」とお答えしたいところですが、残念ながら違います。私は人と話すのが好きで、お客様とのコミュニケーションが楽しくできるところが、ウェディングフォトグラファーに向いていたんだと思います。
写真には様々なジャンルがありますが、お客様との密なコミュニケーションを必要とするのがウェディングです。コミュニケーションが必要なカテゴリーなので、私に向いているのだと思います。
──お仕事が軌道に乗ったきっかけはあったのでしょうか?
それまでのウェディングフォト にはなかった“ロケーションを舞台とした撮影”と“照明を駆使した夜帯の撮影”です。当時は、スタジオでありきたりなポーズで撮影することが当たり前でしたが、夜の東京駅をバックに撮影することを思い立ち、お客様への提供を始めました。徐々にそこからSNSなどの口コミでも広まり、東京・丸の内周辺での撮影ではトップクラスの実績を誇っています。
──お仕事で「これだけは外せない」というこだわりのポイントはありますか?
ウエディングフォトグラファーは、「サービス業(ほかに分類されないもの)」にあたります。つまりは物販や小売り、運送、ECサービスと違って、お客様とコミュニケーションを図り、技術を提供することで財を交換する仕事です。
必ずお客様を間にはさむ仕事である以上、「お客様のことをまず初めに考えること」が、特にこだわっているポイントです。技術は諦めなければ必ず後からでもついてきます。まずはお客様の一生に一度の晴れ舞台であるウエディングにこたえる気持ちが大事です。
──今までのお仕事での会心の出来の1枚はどういったものでしょうか?
WPC2024に日本代表としてWeding Openカテゴリー選出された作品です。この作品は、2024年1月に発表されたWedding Openカテゴリーにおいて世界TOP10のファイナリストとしてノミネートされました。しかしここに至るまでには当然ながら苦労がありました。それまではグーグル検索やYouTubeで見て独学で学んできましたが、世界コンペティションに何度挑戦しても評価には届かなく、根本的に足りない何かがあると感じ、初めて外部のセミナーのお力に頼りました。
色々調べたなかで私の中では世界で最も評価されている唯一の日本人である故島氏(徳島:フォトアートコジマ様)に直接マンツーマンでご指導いただける機会を作り、しっかり学びました。この学びが僕のフォト人生を大きく変えたといっても過言ではないと思います。
──写真家として今後の目標、夢を教えていただけないでしょうか。
Weddingカテゴリーで世界TOP3を目指します。また世界では知名度の高いWPCですが、日本国内ではかなりマイナーなため、もっともっとWPC参加者を増やし写真競争力を高められるよう、様々なメディアを通して普及活動を行い、日本の写真のレベルを世界でもっと評価されるような仕組みを僕が媒体となって作り、いつの日か総合得点で日本国旗をWPCの表彰台に掲げることが夢です。
──池内さんは経営者でもいらっしゃいます。経営者としての目標、夢もお願いします。
世界で最も「ありがとう」が集まるウエディングスタジオを作ることです。そのためにはまずは全国で3本の指に入るスタジオと呼ばれるように、上場を目指しています。そしてただ目指すのではなく「ウエディングフォトグラファーでありながら上場経営を目指す」ことを大切にしています。
そしてウエディングフォトグラファーは誇りをもって活動できる素晴らしい仕事であることを、弊社従業員も含めて教育に力を入れ新人を育み、ウエディング業界に貢献したいと考えます。