テレビCMが流れ、インターネット上でも広告を一時よく見かける印象があったオレンジロゴのTemu(テム)。ネット上にはティームーなどさまざまな呼び名が散見されるが、正しい読み方は「テム」だ。ルーレットの割引クーポンが出てくるECサイト? 格安で大丈夫なのか? そう感じていた人も多いのではないだろうか。一体どんなサイトなのか調べてみた。

2022年アメリカ・ボストンで生まれ、グローバル展開の中で急成長

Temuは2022年にアメリカ・ボストンで設立したECプラットフォームだ。現在(2026年7月現在)は世界90カ国以上の市場に進出、日本では2023年7月から展開を開始している。

Temu設立当初、全米プロフットボールリーグ(NFL)の優勝決定戦「スーパーボウル」でCMが流れたことは新しい企業だっただけに話題となった。日本でも進出当初はCMが流れていたことは記憶に新しい。それによって「よく見かける」と、一気に知名度が上がったことは間違いないだろう。日本国内でお馴染みのECプラットフォームといえば、Amazonや楽天が挙げられる。グローバルではAmazonが巨大だが、欧米ではすでにTemuが追随する勢いを見せ急速に拡大しているのだ。

Temuの親会社はPDDホールディングス。グローバルな展開を見据えて本部を2023年にアイルランドに移し、Temuはアメリカのボストンで登記している。現在もビジネスをスタートしたアメリカでの顧客ベースが最も多く、次いでヨーロッパでも規模拡大中だ。つまり、Temuはアメリカに拠点があるグローバルなECプラットフォームだ。

2026年1月にニールセンデジタル株式会社(視聴行動分析サービスを提供)が発表した2025年の日本におけるトータルデジタルでのインターネットサービス利用ランキング『Tops of 2025: Digital in Japan』によると、Temuは8位でランクイン、初めてトップ10入りした(ちなみにこの数はPayPay利用者よりも多い)。平均月間利用者数は5,721万人だった。2024年のデータでは3,000万人を超える程度だったのが、この1年で倍近くになっているような状況だ。

日本進出した2023年はコロナ禍の直後で、多くの人がオンラインショッピングに馴染んでいた状況だったことが急速なユーザー獲得につながったのは間違いない。さらに昨今の物価高によって少しでも安い物を買いたいというニーズは日に日に高まっており、格安な商品が並ぶTemuはユーザーの心を一気に掴んだといえる。

では、日本人ユーザーの実際の反応はどうなのか? 昨年8月に実際のTemuユーザーについての市場調査をイプソス社がTemuの依頼を受けて調査している。その結果、約7割が「想定よりもコストパフォーマンスが良かった」と、ポジティブな評価で節約を実感できているようだ。利用者の属性は、子育て世代が中心。この調査から、単に安いだけのものをもとめるだけでなく価格と品質のバランスを重視して商品を選んでいることがわかる。

日本で人気のAmazonや楽天との違いは、「発見型」と呼ばれる独自のアルゴリズム

Temuには日用品を中心におよそ700種類以上の商品カテゴリーがある。外国の出店者(出店は法人に限られている)が多いこともあってか、珍しいデザインのものが多く並ぶ。試しに、パーティー用の「紙皿」を探してみる。

最初はオーソドックスな白色や業務用のサトウキビ繊維のモールド食器の他に、さまざまなカラーリングのものや柄をあしらった個性的なものなどが種類豊富にリストアップされた。気になったものをいくつかクリックして見ていくと、その都度、自分のイメージに近いものがどんどん表示され画面が変わってくる(表示の仕方は「トップセールス」「価格低い順」など好みに変えられる)のだ。

ショッピングの際に欲しいものの具体的なイメージが今ひとつ定まっていないのはよくあることだが、Temuの場合は探しているうちにだんだん自分の欲しいものが定まっていく感覚がある。これがいわゆる「発見型」といわれるTemu独自のアルゴリズムで、ユーザーの色やデザイン、好みの傾向を提案してくれ、思いがけない発見につながるというもの。潜在的な自分の好みを掘り起こしてくれるようだ。

ECサイトは往々にして広告によってトップにあがる商品や目につきやすい商品が決まってしまうが、広告ありきではない見つかる仕組みがTemuにはある。このあたりがAmazonや楽天とは違った特徴なのかもしれない。

また、アクセサリーなどの商品も充実しており、いわゆるプチプラで目当てのデザインに近いものをTemuで探し出して楽しんでいる人も多い。

模倣品には積極的に対応、世界トップシェアのあの日本企業も厚い信頼を寄せていた

Temuは今年1月から消費者庁主導の製品安全誓約というものに参加している(Amazon、楽天なども参加している。Temuは日本法人Whaleco Japan株式会社で参加)。Temuの知的財産権保護体制は、出店者審査、商品掲載前のチェック、そして24時間体制の掲載後モニタリングまで、プラットフォーム運営のあらゆる段階をカバーしているとのこと。

Temuの最新IPレポートのデータによると、Temuのプロアクティブ・モニタリングシステム(予防監視システム)は15000以上のブランドを対象としていて、4700万枚を超える画像データと950万件以上のキーワードを活用して知的財産権侵害の検知・防止に積極的に取り組んでいるようだ。疑わしい商品は画像をアップした時点で弾かれるのだろう。

また、知的財産権に関するクレームの平均処理時間は24時間以内です。さらに2024年4月には「Brand Guardian Initiative(BGI:ブランド・ガーディアン・イニシアチブ)」というプログラムを開始した。これはブランド企業と連携しながら知的財産権保護の強化を進めるもので、現在までに3000以上のブランドが参加しているという。BGIを通じて登録された知的財産情報は、Temuの監視システムに組み込まれ、侵害の予防・検知精度の向上に活用されている。

世界でもトップシェアを誇るフィッシングブランドDAIWAを展開する日本企業のグローブライド株式会社は、知的財産保護の難しさに直面していたが、このBGIに参加することで権利を侵害する商品を発見して即座に削除することが可能になったという。一般的には、ブランドの権利を侵害するような商品を見つけても削除するまでには時間がかかってしまうことが多い。だが、Temuの場合は24時間以内にリプライした。こうした迅速な対応もあって、グローブライド株式会社としてはブランドを保護するうえでTemuは重要なパートナーであると信頼しているのだ。

売る側としての見た時のTemuはどうなのか? 思わぬ成功をしているケースも

安さがなによりの魅力となっているTemuだが、出店する売る側として見たときはどうなのだろう? Temuは事業者(法人)でないと出店できないが、国内の出店社は増加傾向にあるようだ。当初は招待制で始まった国内募集だったが、昨年6月からは招待なしでも出店の申し込みができるようになっている。

たいていのECプラットフォームの出店には、初期投資や固定費がかかるがTemuの場合はそれらのコストを抑えた形で販売を始められるという。「まずは小規模に初めて市場の反応をみてみたい」と考える企業にとっては参入しやすい、そんな声がちらほらと聞こえてくる。

宮城県塩竈市にある創業70年の「さとう精肉店」の例を挙げる。

地元への卸売を中心に地域に根ざした商いを行ってきた同店。10年ほど前からはオンラインでの販路も構築してきたが、安定した売り上げの確保が課題となっていた。Temuへの出店を機にこれまでリーチできていなかった20代など若年層が顧客として増加。購入者は関東や全国各地に広がっており、季節の影響を受けずに安定した出荷が実現しているという。

さとう精肉店スタッフ

一方、福井県敦賀市にある「港ダイニングしおそう」は、海産物を中心に扱っている創業120年の店。同店の課題は新規顧客の獲得だった。長年リピーターに支えられている反面、新規は広告をかけなければ届かない。だが、Temuへの出店から新規顧客の比率があがったという。

港ダイニングしおそう 代表・刀根聖氏

両社はいずれも発見型というTemu独自のアルゴリズムによって、これまで届かなかったユーザーへのアプローチに成功している。ECプラットフォームは、買う側も売る側も場所を選ばない利点があるものの、顧客にリーチできなければ売り上げにはつながらない。知ってもらうことや商品を見てもらうためにはコストがかかってしまう。しかし、Temuのプラットフォームはそのいずれにおいてもいい形で着地させているようだ。

そして、思わぬ成功に目を細めている出店社もいる。全国の産直食品を取り扱うTOKKA(トッカ)は、昨年7月にTemuに出店。商品登録から1週間ほどで最初の注文が入り、初月売り上げが1,000万円を突破したという。成果が出やすいプラットフォームだと評価している。

Tokkaの野田 健士社長

今後も日本の事業者は増えると思われるが、特に先に挙げた2例のような地方・老舗といった要素はポイントになってくるかもしれない。初期投資や維持費の少なさが、リーズナブルな価格設定にもつながっている。売る側としてもTemuはメリットが多いようだ。

筆者もTemuで買い物してみた

筆者も試しにTemuアプリをダウンロードして買い物をしてみた。最近はコーヒー豆が200gで軽く¥1,000を超えるようになってしまったので、コスパの良さそうな好みのコーヒーを探す。

マンデリンブレンドのコーヒードリップ15パックで¥1,133(送料込み)に決定。支払いはPayPayで済ませ、配達はヤマト運輸にした。1パックあたり10gのコーヒー粉なので悪くない(たまに7gのものもあるので)。1杯あたり75円くらいとなるだろうか。

営業日1〜5日で届くと表記されていたが、もしその期日を過ぎて着荷した場合には¥600のクレジットが付与されると確認メールに書いてあった。保証みたいなものだろうか。また、「価格調整」というのがあり、支払い後30日以内に同じ商品が値下げされた場合には差額を返金するというシステムだ。これまで筆者もECプラットフォームをいくつか利用してきたが、いずれも初めて聞いたものだった。

購入したコーヒーは注文から3日後、ネコポスで届いた。梱包は小型の段ボールに入っていて簡素な状態だったが、内容物に特に問題はない。味もおいしく申し分なかった。

コーヒーは日常的に飲んでいるものなので、リーズナブルに買い物ができて率直に嬉しい。まずはいいTemu体験ができた。