ほとんど廃墟と化していながら、それでもツァレヴェッツの丘が観光スポットとして人気を集める理由のひとつが、丘の上からの景色。ここからは、丘と川に挟まれ、起伏に富んだヴェリコ・タルノヴォの多彩な表情を見ることができるのです。

断崖に折り重なるようにして建つ古い民家、丘と丘のあいだにある箱庭のような場所に築かれた集落・・・

古都の情緒あふれる町並みと、不完全な城壁が織り成す風景がなんともいえない味わい深さを感じさせます。栄枯盛衰を感じさせる、もの悲しくも美しい光景が、人々を惹きつけてやまないのでしょう。

その存在を誇示するように丘の頂上に建っているのが、大主教区教会。1981年に再建されたもので、ツァレヴェッツの丘でほとんど唯一の完全な建物といっても過言ではありません。

伝統的なブルガリア正教会の教会とは異なり、壁や天井に施された絵画の筆致はきわめて硬直的で、社会主義の影響を受けていることがわかります。

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