一番近い駅が横浜線の相原駅で、そこから徒歩一時間かかる。田舎町である。とは言え、マンションは建っているし、きれいな一軒家も多い。そこそこ綺麗な物件に暮らしてたんじゃないの? と思いながら現地に向かう。
近所まで来たので、通行人に話を聞くと、不審がりながらも場所を教えてくれた。誰に聞いても、逮捕されるまで存在も知らなかったと言っていた。それはそうだろう。自分家の近所にオウムの逃亡犯がいるとは思うまい。
そして逃亡先にたどりついて驚いた。想像以上にボロッボロの建物だったからだ。天井は壊れて骨組みがむき出しになり、壁のトタン材にも穴が空き中が丸見えになっていた。二階へ続く木製の階段が見えるが、いかにも壊れそうなほど劣化している。
これはボロすぎる。質素な生活をしていた方が目立たないとは言え、これはボロすぎる。こんな廃墟のような場所から人が出てきたら、それだけで疑いの目を向けてしまう。
入り口には『私有地につき無断での立ち入りを禁止します』の張り紙が貼られていた。
物見遊山でやってくる人たちがたくさんいたようだ。
結局、この建物をとっておいても得がないと判断したのか、現在は取り壊されて更地になっている。
逮捕の直接の起因になったのは、同棲していた男性が親族に相談していたからだという。最後の敵は味方なんだなあ。
逮捕された時の様子を見ると、このあばら家の周りをズラリと警察官が取り囲んでいた。
結局、ふたりとも刑務所には行かずにすんだが、その後どうなったのだろうか?
彼らの証言により、菊地直子と共に逃亡してた過去のある高橋克也も逮捕された。
オウムの逃亡犯は全て逮捕された。
僕はこんな田舎にはもう来ることはないだろうなと思い、その場を後にした。
しかし2016年7月26日、菊地直子の潜伏先から10キロほど離れた場所で事件が起こる。日本を震撼させた相模原障害者施設殺傷事件である。僕は再び相模原に向かったが、これはまた別のお話である。
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