これからの日本が活きる道は、国際的な「仮想通貨金融センター」としての役割を探ることにある。従来型の法定通貨を取り扱う金融センターとしての役割が、アジアにおいては香港やシンガポールに先行されているのは間違いない。

非営利の国際機関・世界経済フォーラムが公表している「国際競争力指数」において、算出の基礎となる12項目のうち、「金融市場の成熟度」に注目すると、シンガポールは3位、香港が5位に付けているのに対し、日本は20位と大きく水をあけられている(2016年統計)。

だが、シンガポールはGDPや軍事力の規模が小さく、国際的な影響力を確保するには力不足である。要は「大国」になれないのだ。たしかに、シンガポールは、都市国家として生き残りをかけた徹底的な規制緩和等により、アジアのオフショア・センターとしての地位を築いている。ただし、華僑が多いという国家の成り立ちに加え、地政学的に中国の影響力が高まりやすいことが懸念材料となってきている。都市国家(=小国)であるがゆえに、豊かであっても軍事力が豊富という訳でなく、中国による
政治的侵食を許しやすい。中国の影響力が及ぶということは、西側諸国の富裕層にとって安全な資金の逃避先でなくなってしまう危険性があることを意味する。

東南アジア諸国は中国の意向に逆らえず、中国人の資産移転を受け入れてしまう。シンガポールを除くASEAN諸国で、シンガポールの役割を代替できるところはないだろう。

また、香港は仮想通貨を厳しく規制した中国の影響下にあるため、おおっぴらに「仮想通貨金融センター」を目指すことは難しいのではないかと考えられる。このところ、香港が特別行政区であるとの立場を無視する格好で、中国政府が香港の自治を犯し始めている。中国の金融戦略の一角としては成長を遂げるだろうが、早晩、西側諸国の金融センター(イギリスと近しい関係によるオフショア・センター)としてのポジションから、香港は脱落する可能性が指摘されている。

となると、消去法的に、アジア地域で2番目の経済規模を誇り、日米同盟も含めて軍事力で中国と渡り合える日本のポジションがクローズアップされる。

日本は、アジアで唯一、中国に正面から対抗できる国だ。「大国」としての体面を保てていて、中国の影響力からも独立できている日本は、アジアの、いや世界全体の「仮想通貨金融センター」の地位を目指せるポテンシャルが充分にあると考えられる。少なくとも米国は、日本がその立場を目指すことを妨害しない。将来の日本が経済力を強化し続け、大量の米国債を買い支えていなければ、米国が危機に陥るからだ。

(つづく~「仮想通貨のゆくえと日本経済vol.14 「シナリオ」は危機管理能力を高める【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】」~)

◆執筆者
シークエッジグループ代表 白井一成
フィスコIR取締役COO 中川博貴
フィスコ取締役 中村孝也

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