南翼廊にあるダブリンの守護聖人ローレンス・オトゥールの礼拝堂では、ロマネスク様式とゴシック様式のアーチが重なる珍しい装飾が見られます。ここには鉄のケースに入った聖人の心臓が納められていましたが、2012年に盗難に遭い、2018年に再び警察を通じて大聖堂に返還されました。

ミイラ化した聖人の心臓を盗んでどうするつもりだったのか・・・謎は残りますが、何はともあれ無傷で返還されたことは喜ぶべきことでしょう。

13世紀に造られたタイルで彩られた身廊には、ストロングボウの大きな墓があります。ストロングボウとは、1170年にダブリンを征服したアングロノルマン人の指導者。

1176年にこの大聖堂に埋葬されましたが、もともとの墓は1562年に起きた屋根と南壁の崩壊により破壊され、新しい墓石が造られたため、遺体は墓の中にはありません。

このように地上階にもさまざまな見どころがあるクライストチャーチですが、実はそれよりも有名なのが地下室かもしれません。

その歴史を11~12世紀にさかのぼるこの地下室は、中世の地下礼拝堂としてはアイルランドとイギリス最大級。さらに、現存するダブリン最古の建造物でもあります。

ほかの多くの教会では、地下礼拝堂は教会の地下の一部にのみ設けられていますが、ここでは教会の地下全体に空間が広がっているため、石柱の森さながら。地下は人目につきにくいという理由から、ウィリアム3世が寄付したプレートをはじめ、歴史的な聖宝も展示されています。

この地下礼拝堂の名物ともいえるのが、ネコとネズミのミイラ。

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