「彼のご主人の声(His Master’s Voice (HMV))」とは、ビクター(現・JVCケンウッド)社のマークとして使われた、蓄音機に耳を傾ける犬を描いた絵をもとにしたグラフィティですが、バンクシーの犬は、ご主人の声にバズーカ砲を向けています。

・粉を吸う警官(Snorting copper)
場所:115 Curtain Rd, London EC2A 3BS(経度緯度 51.525772, -0.080500)

上記のナイト・クラブ「カーゴ(Cargo)」から徒歩数分の場所にある、北欧スタイルの洒落たサンドイッチ・ショップの中に設置されているこのグラフィティは、珍しい経緯をたどっています。

現在の小奇麗な商業ビルが開発される前は、別の建物が建っていました。その建物のトイレ・ブロックの壁に描かれたのが、地面に這いつくばり、ストローで薬物の粉を吸い込んでいる警官です。
このグラフィティは傷をつけられ、さらには地区政府により白いペンキで塗りつぶされていました。

この地を買い取った不動産開発業者は、バンクシーの絵が隠れている部分の壁を切り出し、洗浄、修復作業を施して鉄骨のフレームに収め、建てなおされたビルの一角に設置したのです。また、保護しながらも店外から見えるように路地に面したガラス張りの壁の内側に設置されています。オークションに出してぼろ儲け、または店内の奥まった場所に設置すれば店の集客につながったかもしれませんが、そうしなかったことにこの不動産業者の心意気が感じられて嬉しくなります。

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