その冷涼な気候から、隣接する地域よりも春の訪れが遅れる長野県。そんな長野県にも春の訪れを告げてくれる使者のひとつが、県内各地で栽培されている杏の花です。

長野県北部にある千曲市は、県内でも特に杏の栽培が盛んな地域。市内の倉科地区では、3月後半から4月にかけて、なだらかな丘陵地に杏の花が咲き誇ります。一目で多くの杏を見渡せることから「一目十万本」とも呼ばれているその光景は、「日本一美しい杏の里」として訪れる人々を魅了するのです。

開花期間中には「あんずまつり」も開催され、毎年約10万人があんずの花を楽しみに訪れます。期間中は最寄り駅となる屋代駅からシャトルバスも運行。上平展望台やスケッチパーク、観光案内所など、里内の主要各地を巡ります。

なだらかな丘の上に位置する上平展望台。建物の屋上部分を利用した展望台は、眼下に広がる杏畑のほか戸隠連邦や北アルプスが一望できる絶景スポットです。杏が一面に咲く様子は、まるでピンクの絨毯のよう。

建物の中では、この里ならではの杏を使用したお菓子のほか、お土産、軽食が販売されています。杏を使用したソフトクリームは、ほんのりと酸味のきいた爽やかな味わい。

展望台からさらに丘を上がると、他の杏よりもはるかに大きな1本の木が現れます。実はこの巨木も杏子の木で、樹齢250年ともいわれる在来種なのだそう。250年前といえば日本は江戸時代。この立派なあんずの木は江戸時代からこの地に立ち、里の様子を見守ってきたのです。

次ページ