「日本からGAFAに続く企業が生まれるか」とはたびたび議論されるテーマであるが、その足がかりになるかもしれない企業がある。法人向けアウトソーシングサービスを提供し、アマゾンと連携した人工知能サービスなども手がけて話題となった日本サード・パーティ株式会社(東京都品川区)である。すぐれた技術力を持つ同社が開発したのが、エンジニアが持つITスキルを計測するツール「GAIT(ゲイト)」だ。

2012年にリリースされたGAITの特徴は、受験することで実務におけるITの総合力が数値化されるというもの。データベース、OS、アプリケーション、ストレージ、セキュリティ、ネットワーク、仮想化、以上の7つの分野におけるスキルが測られる。

「受験」という単語から資格試験のようなものをイメージするかもしれないが、合否を判断するテストではない。IT全般の基礎知識と経験を数値化するもので「スキルを可視化する」とは同社代表の森豊(もり ゆたか)氏。受験者のITスキルのレベルを、数字という目に見える形にしてくれるのだ。

GAITを採用の評価基準にする企業が増加中

エンジニアを雇用する企業にとって、人材の能力を客観的に評価することは非常に重要だが、GAITを使うことで測定や評価のためのリソースを大幅に削減できる。その効率のよさから、GAITを導入して人事や採用の評価基準として活用している企業も増えている。

一方のエンジニアにとっても、GAITを受験することで自身の得意分野と不得意分野を客観的に把握することができ、今後のスキルアップを考える上で的確な指針が得られるというメリットがある。

GAITを利用しているのは、企業や社会人だけではない。一般社団法人グローバル人材育成推進協議会が主催する全国統一学生ICTテストでもGAITは使用されていて、学生にとっても自身のスキル習熟度を把握する重要な基準となっている。

IT人材の宝庫インドも巻き込む

海外においてもGAITは活用されている。もともと、海外企業の技術サポートもく行なってきた日本サード・パーティらしく、GAITは日本語だけでなく、英語と中国語での受験も可能だったが、2015年からはインドの大学生に対して無償での提供を開始。2019年3月の時点で、57820人ものインド人がGAITを受験している。日本以上にIT教育が発展しているインドにおいて、GAITは学生たちのニーズに応えるものだったのだ。

このように優秀なIT人材が豊富なインドにおいて、日本サード・パーティはインド人エンジニアと日本企業を結びつけるサービスも開始した。GAITによって可視化・集約されたインド人のエンジニアと、人材不足に悩む日本企業、またはインド市場進出を目指す日本企業をマッチングさせようとしているのだ。

日本サード・パーティは2019年4月24日にインド支店を開設して、インドでの事業展開を開始。その中で、人材採用支援サービス「MaaS(Matching as a Service)」をスタートさせた。これによってインド人エンジニアと日本企業が結びつき、海外での仕事を望むインド人エンジニアと、人材選択の幅を広げたい日本企業の双方の望みが叶えられることだろう。

森氏は今期、GAITを含む人財コンサルティングおよびグローバルビジネスの分野に3,000万円の投資を行うと発表。「インドへの投資は1~2年で花開くものではない。継続的に取り組む」とした。国内IT企業の競争力を下支えする同社のチャレンジは社会的な意義も大きい。今後も動向に注目したい。