中国が仮想通貨に対して態度を軟化させたという誤解を招く要因のひとつは、2020年1月1日からブロックチェーン技術の法的な立ち位置などを取り込んだ暗号法が施行されたことであろう。しかし、この暗号法はあくまで暗号技術のひとつであるブロックチェーンを内包しているものであり、仮想通貨以外の用途でブロックチェーン開発に携わる企業にとってビジネスが進めやすくなるという以上のものではない。暗号法案が昨年10月26日に成立した直後、人民銀行が上海の仮想通貨事業の取り締まり強化を発表した際に、仮想通貨とブロックチェーン技術の違いを強調したことが象徴的だ。暗号法が施行された後も当局幹部が「仮想通貨の存在は許さない」と発言している。
17年9月以前、ビットコインの取引高の9割以上は中国の仮想通貨取引所における人民元建ての取引だった。当時から中国の取引所が公開していた出来高の数値の信憑性を問う声はあったし、いま現在に中国でネット制限の壁を越えて仮想通貨取引をしている人が皆無かどうかといった点には議論の余地があるが、もしも中国当局が仮想通貨取引の禁を解くことがあった場合に価格に与える影響は大きい。しかし、その可能性は依然として低いままだ。中国がブロックチェーン開発により注力したとしても、その目的が中央銀行によるデジタル人民元という中央集権型、徹底管理の志向である限り仮想通貨取引が再び自由になる可能性は非常に低いだろう。
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