5月19日(金)、科研製薬株式会社が都内にてプレスセミナーを実施した。セミナーは、介護支援専門員向けの会員制ウェブサイト「ケアマネジメント・オンライン」を運営する株式会社インターネットインフィニティーと合同で開催された。テーマは、「介護現場における『爪白癬(つめはくせん)』の治療の重要性と日常生活への影響」である。

セミナーでは、埼玉県済生会川口総合病院の皮膚科主任部長である医師の高山かおる氏の講演が行なわれた。

高山氏によれば、足の爪は指先の力のバランスをとる上で非常に重要な役割を果たしているという。そのため、爪白癬(爪水虫)によって高齢者の爪が変形すると歩行困難になり、その結果、転倒して怪我をしてしまうことも珍しくないのだ。

怪我につながりかねない爪白癬だが、その危険性に対する認知度はまだまだ低く、医療や介護の現場でも爪白癬が蔓延しているという。

高齢者の足爪には異常が多く、親指の15%に巻き爪、44%に肥厚爪の症状が見られたという2003年の厚生労働省の調査も高山氏は紹介した。

肥厚爪の原因となるのが、爪白癬である。日本人の10人に1人は罹患していて、高齢者になるほど罹患率が高い。

爪白癬の治療薬としては外用薬と飲み薬が存在し、外用薬の治療期間は約1年、飲み薬の治療期間は3~6ヶ月である。

肥厚爪は下肢機能低下ももたらすが、フットケアがその改善に有効だといい、さらには介護現場での爪白癬に対する認知度向上も必要だと指摘する。主催の科研製薬は、ケアマネジャー向けウェブサイト「ケアマネジメント・オンライン」を運営する株式会社インターネットインフィニティーと連携し、チラシを使ってケアマネジャーに対する啓発を行なった上で、アンケート調査を行ない、認知度の向上が患者の受診・治療につながることなどを確認している。

足を洗うこと、足を見ることが重要

セミナーでは、フットケアのスペシャリストたちによるトークセッションも実施された。前述の高山氏の他、社会医療法人社団 カレスサッポロ 北光記念病院の診療技術部門の看護師である菅野智美氏、一般社団法人フットヘルパー協会会長で介護福祉士の大場マッキー広美氏が登壇した。

トークセッションで語られたのは、医療・介護の現場での実感を伴った言葉だった。爪白癬には、「痛みやかゆみなどの自覚症状がほとんどないため放置されがち」「変形した高齢者の爪を見慣れているため、爪白癬で爪が変形していても、“高齢だから仕方がない”と受け止められがち」などの問題があるという。

トークセッション内では、爪白癬に罹患していないかどうかを確かめるためのチェックリストも紹介された。チェック事項の中でも爪の色と形は、家族などでも判断しやすいとのことだった。

爪白癬に対してフットケアが有効だが、足を洗うこと、足をきちんと見てチェックすることが重要だと説明された。家族や介護スタッフが高齢者の足を洗うこと、足を見ることが習慣化されると異常にも気づきやすくなるのだ。

セッション内では、「足白癬にかかった場合には皮膚専門医で受診してほしい」ということも勧められた。爪は骨の一種と誤解していて何科で受診すればいいのか迷ってしまう人もいるが、皮膚科での適切な診断と治療が重要とのことだった。