医薬品事業や在宅医療事業を手掛ける帝人ファーマ株式会社は、睡眠時無呼吸症候群の予防啓発を目的とした「『家族となおそう睡眠時無呼吸』疾患啓発キャンペーン」を始動し、1月27日(月)に都内にてメディア発表会を開催した。
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome 以下、SAS)は、睡眠中に呼吸何度も止まってしまう病気。高血圧・糖尿病などの生活習慣病と関連することもわかっているが、睡眠中のため気付きにくいという問題がある。今回のキャンペーンは、そうしたSASに関する正しい知識を伝えることを目的としている。
発表会には、久留米大学学長の内村直尚氏が登壇しSASについて講演した。内村氏によると、SASの診断基準は、「1晩7時間の睡眠中に30回以上の無呼吸がある」または「1時間当たり5回以上の無呼吸がある」というもの。SASの原因は肥満や扁桃肥大などによって気道が狭くなることだが、やせている人でもSASになることがある。
SASになりやすい人の特徴のひとつとして、「下あごが小さく小顔」「下あごが後方に引っ込んでいる」というものがあり、欧米人より下あごが小さい日本人はSASになりやすいという。
SASには様々な合併症があり、高血圧や脳卒中、糖尿病などのリスクが高まる。また、日中に我慢できない眠気を感じるため、居眠り運転で交通事故を起こす危険性もある。
治療法としては、生活習慣の是正(睡眠中の体勢の工夫、減量、禁煙、禁酒など)があるほか、シーパップ療法、マウスピースを使った治療、扁桃肥大を治す手術などもある。
講演の最後に、SASの疑いがある場合はまず受診して適切な治療を受けることが重要と語って内村氏は講演を締めくくった。
続いて登壇した大阪大学大学院の准教授で公認心理士の平井啓氏は、行動経済学の観点から「治療を勧める家族・医療者とそれを拒否する患者」というすれ違いがなぜ起こるのかを解説した。
すれ違いの原因は、家族・医療者は客観的に物事を見られるが、患者は主観的にしか物事を見られず合理的には判断できない点にあると平井氏は語った。
こうしたすれ違いを解消するためにも、家族は患者が合理的に判断できないこともあるという事実を理解し、その気持ちを受け止めてコミュニケーションをとることが重要だという。また、治療を勧める際に「治療しないとこんな大変な目に遭うよ」などとリスクを強調して患者を怖がらせるスタンスは逆効果になることにも平井氏は言及した。
講演に続いて、佐々木健介氏と北斗晶氏の夫妻がアンバサダーとして登壇してトークセッションが行われた。家族旅行でホテルで同室にとまった際に息子さんから「2人ともいびきがえぐいよ」と言われたという佐々木氏と北斗氏。そのことがきっかけで2人は病院に検査に行ったという。
トークセッションの中では、だれでも簡単にできるセルフチェックも紹介されて、佐々木氏と北斗氏がチャレンジした。セルフチェックは本キャンペーンの公式サイトにも掲載されていて、6つの質問に「はい」か「いいえ」で答える簡単なもの。セルフチェックによると北斗氏も佐々木氏もSASの兆候があり、受診を勧められるという結果になった。
今回のキャンペーンは「家族となおそう」というコンセプトだが、そのためには家族にSASのことの伝え方にも工夫が必要で、公式サイトには伝える際に役立つコンテンツがいくつか用意されている。
そのうちのひとつのムービーを見た北斗さんと佐々木さんは「ほっこりした」と感想を述べ、佐々木さんは「治療は恥ずかしいことじゃない。治って明るくなった自分を感じてもらいたい」、北斗さんは「家族以外で、例えば友達同士だとイビキのことを言いにくいかもしれないが、伝え方を考えながら伝えるべきと感じました」と語った。