株式会社ティムスが「研究開発中の脳梗塞治療薬 実用化に関するプレス説明会」を開催した。この新薬は投与可能時間が従来の治療薬の4.5時間の約3倍に延びる可能性があるという。日本の脳梗塞患者の現状はどうなのか、そしてこの新薬によってどのような効果が期待できるのか語られた。

発表会ではまず、代表取締役社長 若林拓朗氏が概要を説明。

脳梗塞は脳血管障害のひとつ。2023年の脳血管疾患は188万4千人、年間死亡者数は10万4518人で死因順位では第4位となっている。このうち脳梗塞患者は131万2千人と70%を占めている。治療により命が助かった場合でも、いったん発症すると麻痺などの後遺症が残るケースが多い。脳の永久的な損傷につながる可能性があるのだ。死亡原因が上位であるだけでなく、多くの患者が後遺症に苦しんでいる。

脳のある部分に梗塞が起き、血液の流れが止まることにより、血液を得られない箇所の細胞が壊死してしまう脳梗塞。発作が起きると手足のしびれや麻痺、ろれつが回らないといった症状が発生し、その症状は時間を経るにつれて悪化していく。突然このような症状発生した場合には救急車を要請することが重要であると言われている。治療開始までに要した時間の長短が、救命の可能性や後遺症の程度に大きくかかわるのだ。

今回の開発に携わる農学博士、取締役会長 蓮見惠司が治療薬の詳細を説明した。

ティムスが開発している治療薬は「TMS-007(JX10)」と命名され、現在臨床試験が続けられている。この治療薬の画期的なブレークスルーは、投与可能時間が従来の治療薬よりも長く、約3倍の12時間と大幅にのばせる可能性があることだ。従来の「t-PA」は投与時間が4.5時間。それ以上の時間が経過すると、投与によるデメリットが増加し悪化する場合が増えてしまう。

ポイントは血栓の溶解「血栓溶解作用」と出血を抑える「虚血再灌流障害制御作用」の2つだ。

「血栓溶解作用」は文字通り血栓を溶解する作用で、血管に詰まっていた血栓を溶解する作用だ。「虚血再灌流障害」は、梗塞を起こして血流が止まった後に血栓が溶解されて再び血流が戻るときに発生する。組織細胞に障害が起こり出血してしまうのだ。「血栓が溶解されるのに出血してしまい状態が悪化してしまう」というリスクである。

TMS-007(JX10)は血栓溶解作用に加えて、「虚血再灌流障害制御作用」、つまり血管内皮などの細胞組織の炎症を抑える働きや抗酸化作用により、出血のリスクを抑えることができる。このリスクが下がることにより投与時間を延ばすことが可能になるというわけだ。

国内の臨床試験は国内の少数の患者に対する臨床試験のph2aまで完了。治療開始の時間が従来の治療薬の4.5時間に比較して12時間まで延ばした場合においても、その有効性と安全性において収容評価項目の目標を達成しているという。

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