玉林に来たそもそもの理由が、毎年開催される『犬肉祭り』を見たいと思ったからだ。中国や韓国で犬の肉を食べることが取り沙汰されているが、僕は、犬肉食には全く反対ではない。誰が、どんな肉を食べようが構わない。ただ好奇心で見てみたいと思っただけだ。
ガイドの案内で市場に行く。かなり大きい市場で裸の男たちが豚肉をさばいて並べている。鳥や魚もずらりと並べられている。
「鳥はこないだまで鳥インフルエンザが大発生して並べられなかったんだよ。大変だった」
とオッサンが笑っていう。路上には鳥からむしった羽が無造作に並べられている。干して、羽毛の材料として売るらしい。最近までインフルエンザが大発生していたのに? 大丈夫? と思ったけど、まあとりあえず牧歌的ということにしておこうか。
魚は海までの距離があるため、川や池に住むナマズっぽいのが主流だった。しかし肝心の犬がいない。
「去年までは並べていたんだけどね。全世界で反対運動が盛んになったんで、政府が見える場所での販売を禁止したんだ」
と市場の親父はいまいましそうな顔で言う。わざわざ日本から来たのに、ショックである。肩を落として市場の周りを歩く。
屋台が出ていて、調理をしている。ヤギや豚の首が看板代わりに置かれている。
その一角に犬肉を扱う屋台が数軒あった。話を聞くと、おばさんは急に怒って包丁を持って怒鳴った。
「また来たのか!! いいかげんにしないと叩き切るよ!!」
と怒っている。どうやら、動物愛護団体が散々取材に来たらしい。
犬肉を切る包丁は、ナタのような肉切り包丁なので迫力がある。
他の屋台では話を聞くことはできたが、散々嫌がらせをされたらしく、なかなか心を開いてもらえなかった。
犬肉を捌いているおじさんが、かわいい犬のイラストが描かれたエプロンをつけてるのが面白かったのでつっこんでみたら
「ああん?」
と、怒られてしまった。
町中やホテルでは、カメラを回している外国人の姿が目についた。玉林での犬肉祭りが話題になっているが、南部では広い地域で犬肉を食べる。もちろん桂林でも食べる。桂林出身のガイドが、イラッとした口調で話す。
「季節ごとに色々な肉を食べる。犬はスタミナがつくって言われているから、夏や冬に食べる。もうずっと前から。ヨーロッパ人に文句言われる筋合いはないね。牛や豚だってかわいいし、かわいそうだしね」
と憤りながら話した。
「北部(北京や上海など)のやつらは自分たちは犬を食べないから犬肉食を反対する人たちも多かった。でも最近はほとんどの人が、反対していないよ」
一時は、ボランティア団体が犬を助けたらしいが、餌やりなどが続けられず、結果殺してしまったらしい。
犬を助けるくらいなら、恵まれない子供におカネやボランティア力を回すべきだという流れになっているという。
街中にはそこいらに「狗肉(犬肉)」という看板が出ているのだが、「狗」の文字が塗りつぶされて消されているお店もたくさんあった。
ただそれでも営業はしている。
犬肉の屋台では、近所の人が徒歩やバイクで犬肉を買いに来ていたし、レストランには老若男女が店内店外で犬鍋をつついていた。
僕もいただいたが、甘辛いタレで炒められた料理は美味しかった。