共同通信の世論調査で、自民党総裁選挙で誰が次の総裁にふさわしいかで、小泉進次郎氏(自民党筆頭副幹事長)が首位になったと報道された。二位が石破茂氏、三位が安倍首相である。自民党支持層だけだと安倍首相の人気は、小泉、石破両氏を大きく引き離している。
「世論調査 内閣支持率は38.9% 不支持50.3%」:毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20180514/k00/00m/010/011000c
いずれにせよ、支持層を問わないときの小泉、石破両氏の人気は髙い。これに自民党の中でのポスト安倍といわれる人たちでは、野田聖子氏、そして党内勢力的には有力視されている岸田文雄氏らの名前を挙げるのが定番化している。これらポスト安倍に共通しているのは、いずれも財政再建や社会保障の見直しなどという「美名」に隠れた、ガチガチの消費増税主義者であることだ。最近は消費増税だけではなく、小泉氏のように「こども保険」という名前での事実上の増税を唱えるなど手法も巧妙化している。
小泉氏についていえば、最近、その姿勢が「変化」してきているという指摘をする人もたまにいて驚くことがある。例えば、「“消費増税をしろしろ”という新聞は、軽減税率が入ることで消費増税を負担しないんですよ。おかしくないですか?」という趣旨の軽減税率廃止論を唱えたことを見ての理解だと思う。
軽減税率は、消費税が10%に引き上げられるときに食料品・新聞などへの税率を8%のまま据え置く税制である(詳細は以下の政府の広報を参照 https://www.gov-online.go.jp/tokusyu/keigen_zeiritsu/)。
新聞は自社だけはこの税負担の免除の恩恵に浴することができるので、消費増税推進をしているという見方が世論の一部に根強い。この見方を前提にすれば、小泉氏の軽減税率廃止論は、まるで消費増税を推進する新聞などメディアへのけん制と見えるかもしれない。しかしそれは単に大きな“誤解”である。
軽減税率については、消費増税を推進する財務省側はその税収減などから終始反対の立場だった。財務省の理屈だと、減税や金融緩和などで経済の規模が年々大きくなり、そこから生み出される税収増は「ない」という前提だ。そのため軽減税率の適用は単純な「税収不足」になる。これは財務省の机上の計算では避けたいものだった。だが政治的に軽減税率の適用をおしきられた背景がある。
財務省の考えと小泉進次郎氏の考えは、筆者の観察では常に調和的なものにみえる。ちなみにそういう財務省増税主義と調和的な国会議員は無数にいるので、その意味でも小泉氏の発言はいつも凡庸に思える。新しいリーダーを期待されるのに、彼の親の世代とまったく同じな財政再建=構造改革主義の見本でしかない。政治的に凡庸である。
そして軽減税率廃止論は、消費増税絶対主義と矛盾しないどころか、むしろ消費増税絶対主義から導きだされる自然な発想なのである。
私見では、消費増税は低所得者層に持続的に負担を与える悪しき税制である。日本には失われた20年の結果や、または高齢化などで低所得の人たちが増えた。この人たちの負担増こそが、日本で消費増税の悪影響が持続している原因だといえるだろう。その意味では、軽減税率の採用などではなく、消費減税こそ必要だろう。政治的に無理だ、という人がいるならば、その人むけに妥協して消費増税再々凍結でもいい。だが、政治的に無理とはなんだろうか? やる気のない、という意志の裏返しでしかない。消費増税は自然現象でもなんでもなく、単に人間が決めることが可能な政策の話でしかない。
本当の政治的リーダシップは、この消費増税の否定だけではなく、さらに前向きなマクロ経済政策(積極的な金融緩和と機動的な財政政策の組み合わせ)を構築できるかどうかに関わってくる。安倍首相や小泉氏らポスト安倍、そして野党勢力の中でどれほどこれがわかっているのか否かが、日本のこれからの在り方を決めるだろう。