もともとは1715年に大学の舞踏ホールとして造られたもので、1791年からゲーテが監督を務めたワイマール宮廷演劇団が5シーズンにわたって公演を行ったほか、シラー作の「ドン・カルロス」の初演が行われた場所としても知られています。

それほど大きなホールではありませんが、白亜のバルコニーと柔らかな色彩で描かれたロマンティックな天井画が優美な空間。現在もイベント会場として使用されています。

・マインツ選帝侯国総督邸(現テューリンゲン州首相官邸)

1808年にゲーテがナポレオンに謁見した場所が、マインツ選帝侯国総督邸。1711年か1720年にかけてルネッサンス・バロック様式で建てられた華やかな建物で、1802年までマインツ選帝侯国総督の官邸として使用されていました。

1808年10月に開かれたエアフルト王侯会議の際には、ナポレオンは総督邸に滞在しながら仕事をこなし、ここにゲーテを招きました。ゲーテの著作の熱心な読者であったナポレオンは、戦地にまでゲーテの出世作「若きウェルテルの悩み」を持参し、7回も読み返していたといいます。

ナポレオンは、自らが「ファン」であるゲーテの姿を目にした瞬間、「ここに人あり」と大きな声で挨拶し、ゲーテの類まれなる才能をたたえ、レジオン・ド・ヌール勲章を授けました。

ゲーテとナポレオンが対面したマインツ選帝侯国総督邸は、1995年以降テューリンゲン州首相の官邸として使用されています。

・ハウス・ファーターラント

マインツ選帝侯国総督邸に隣接して建つ、白壁に黄色のアクセントが施された建物が、ハウス・ファーターラントです。1734年から1834年まで、この建物はザクセン=ワイマール=アイゼナッハ公国の所有となり、1805年までワイマール公の関係者の館として使われました。

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