財務省の文書書き換え問題からのマスコミと野党の主目的は、麻生太郎財務大臣の辞任であることは明瞭である。麻生大臣が辞任すれば、安倍政権の骨格が大きくゆらぎ、秋の総裁選での安倍三選に赤信号がともると、反安倍陣営は思っているのだろう。29日の国会での麻生大臣の森友学園をめぐる文書改ざん問題についての発言についても、この麻生下しが野党とマスコミの主要関心事である。

麻生大臣は「書き換えられた文書の内容を見る限り、少なくともバツをマルにしたとか、白を黒にしたとか、改ざんとかそういった悪質なものではないのではないか。いわゆる答弁に合わせて書き換えたということが全体の流れである」と発言した。筆者は、文書書き換えでも文書改ざんでも、財務省のしたことは国民の信頼を失墜させたことで重大なことだと考えている。ただしそれは麻生大臣の責任かといえば、さすがにそれは違うと否定したい。実際に文書の書き換えは麻生大臣の認識できない範囲で行われた。問題は今後の対応だろう。

だが、マスコミは、麻生大臣が「改ざん、悪質なものではない」「悪質なものではない」と題して、その言葉尻をとらえて報道している。それと同時に野党側がこの言葉尻をとらえて、麻生大臣に辞任を迫るという発言も紹介している。要するに今後の具体的な対策を麻生大臣がどうとるか、あるいは文書の書き換えがどの程度のものなのかを検証するというよりも、彼の言葉尻をとらえていますぐにでもやめさせたい、その世論の流れをマスコミは作りたいのかもしれない。もちろん野党がそうするのは政治的に理解できるが、マスコミの報道のあり方としてはどうなのだろうか? あまりに政治的に動いているのではないか。

ところで野党もマスコミも麻生大臣辞任の流れだけに関心を集中させて、本当の“真の敵”である財務省にはまったく手ぬるい批判しかしていない。たださすがに最近は財務省自体はおとなしくみえるが、それでも消費増税路線(財政再建や社会保障の拡充という美名でも表現される)は健在である。経済財政諮問会議は「骨太の方針」の中に消費増税を明記し、さらに財政再建の期限や目標値を設定している。またマスコミも財務省発と思われる消費増税対策を報道したり、または「識者」の中でも消費増税の影響を論じる人が最近目立ってきた。

どれも「(消費税の悪影響に)万全の構え」という表現を用いて景気対策の有効性を強調したり、あるいは消費増税の影響自体を過少にみるものが多い。財務省は見かけは大人しくしていても、その他の増税マスコミや増税政治家、そして増税識者たちが代わりに消費増税を宣伝し、それを着実に具体化していこうとしている。その情熱は恐れ入るしかない。要するに、文書書き換え(改ざん)問題がどうだろうと、財務省は健在そのものなのである。

今とまったく同じように2013年から14年にかけて、増税陣営は消費増税の万全の対策だとか、その影響がそれほどでもないことを喧伝していた。だが、事実はまったく違うもので、日本経済は大きなダメージを負った。喜んでいたのは消費税率を上げることに成功した財務省と増税陣営だけだろう。もちろん増税陣営の中には野党勢力の多くも入る。

先ほどの麻生大臣の言葉尻りをとらえることよりも、はるかに重大なのはこの財務省の消費増税路線とその弊害である。この問題にこそ日本の将来がかかっている。