新聞の社説など誰も読まなくなったので、大した意味がないという声が多い。確かにそういう面はあるのだが、社説はその新聞を読み解くうえで非常に重要だ。というのも、新聞各紙の論説委員が毎日議論する中から社説が形成されて行くからだ。執筆は論説委員の持ち回りだが、記者の中でも出世頭のエリートである論説委員たちが社論を作るので、各紙の論調を規定することになる。つまり、一人ひとりの記者にとって、いわば掟のようなもになるので、どんな記事でもおおよその場合、社説の影響がまぬがれないのである。

最近メディアの劣化が目に余るが。特に朝日の論説が酷い。過去70年ずうっとそうだったではないか、とお怒りの人も当然いるだろうが、第二次安倍政権誕生後に特に酷くなり、この2、3年で臨界点を超えた。

5月31日の社説は《党首討論 安部論法もうんざりだ》というタイトルで、この期に及んで〈モリカケ〉を議題にする立憲民主の枝野代表を持ち上げ《野党党首の多くが取り上げたのは、やはり森友・加計問題だった》と、まるで朝日の下請け機関のような特定野党には無批判だ。《質問に正面から答えず、一方的に自説を述べる。論点をすり替え、時間を空費させる》と安倍首相を非難する。《そんな「安倍論法」のおかげで、議論の体を成さない空しい45分となった》と言うが、そんな〈モリカケ〉だけを取り上げるお蔭で、1年半も時間を空費させたのは誰だ? そんな朝日論法に国民はうんざりだ。

5月30日の社説では《防衛大綱提言 「予算倍増」の危うい道》と防衛費が倍額される防衛大綱提言を《5兆円台に膨らんだ防衛費を10兆円規模に倍増させようというのか。財源の議論もないまま大風呂敷を広げるのは、無責任の極みだ》と非難する。無責任の極みは、いったい、誰だ?

ここ数年で事故による自衛官の殉職が増えているのは、シナの日本への侵略意図が物理的に激しさを増す中で、極端に少ない防衛費の中でギリギリの運用を迫られている弊害が現場に出ているからだ。軍事費がGDP1%という世界の常識からは信じられない低予算で、自衛官は自らの命を削りながら任務に赴いている。

少ない予算によって、新兵器の導入より、通常兵器の平時の運用に支障が出ていることは、知性をもって取材をしていれば、朝日新聞も知っているはずだ。北朝鮮だけでなく、東シナ海で尖閣を虎視眈々と狙うシナの戦略の変化と海軍、空軍の陣容が巨大化し、脅威になっているのも知らないはずはない。知っていてもとぼけるのは無責任で悪質、かつ犯罪的と言える。

■世界が北朝鮮に注目する中、朝日が報道した朝鮮総連の無責任”業務報告”記事

5月26・27日に朝鮮総連の最高意思決定機関、全体大会が4年ぶりに開催されたが、朝日はこんな記事でお茶を濁した。

【朝鮮総連が全体大会】

https://digital.asahi.com/articles/DA3S13514369.html?_requesturl=articles%2FDA3S13514369.html&rm=150#Continuation

2018年5月28日 朝日新聞デジタル

今、まさに世界の焦点になっているのが、独裁者、金正恩が率いる、北朝鮮。その日本における出先機関である朝鮮総連の重要な大会が、こんな記事で済まされていいわけがない。

産経が取材から締め出されることもある朝鮮総連と極めて良好な関係が過去60年以上ある朝日新聞なら、もっと真面目に報道するべきだ。それができないのは、過去帰国事業のお先棒を担いで、多くの在日朝鮮人や日本人妻を死地に追いやった責任すら、朝日は取ったことがないからだろう。

この大会に在日朝鮮人でなく、日本人の誰が参加して、何を話したのか? 与野党問わず多くの政治家も参加したが、どんな関わりをもって、何を訴えたのか、最低でも朝日新聞はそれを他紙より大きく、かつ詳細に報じる義務がある。なぜなら、過去、朝鮮総連に最も理解のある日本のメディアだったからである。

評論家の三浦小太郎氏が、朝鮮総連の機関紙「朝鮮新報」の記事を引用して、誰が何を話したかをブログで記事(http://miura.trycomp.net/?p=4693)にしている。是非、読んで頂きたいのだが、驚いたことに、誰一人として、警察庁が公式に認める拉致の疑いがある800人以上の日本人について、そして拉致問題そのものに何も言及しなかった。しかも、現在も10万人以上が強制収容所でゴキブリやネズミを食べる地獄の苦しみを味わっている北朝鮮の人権問題にも誰も言及していないのである。

朝日新聞にまだ知性が残されていたら、せめてそれ位のことは書けるはずだった。