6月12日に全世界が注目する、史上初の米朝首脳会談がシンガポールで開催される。すでに9日からシンガポールは厳戒態勢に入った。というのも、二日前の6月10日に金正恩国務委員長(朝鮮労働党委員長)とトランプ米大統領もシンガポール入りするからだ。シンガポール政府はリー・シェンロン首相が、10日に金正恩国務委員長、11日にはトランプ米大統領とそれぞれ個別に会談することを発表した。

10日午後2時半過ぎ(現地時間)に金正恩は中国共産党からチャーターした特別機でシンガポールに到着した。恐らく世界中のインテリジェンス関係者も秘密裏にシンガポール入りしている。というのも、今回の米朝首脳会談の結果は、東アジアの安全保障や地政学に影響を与えるだけでなく、世界中の安全保障環境や地政学的変化にも大きい影響を与えるからだ。

先日、CNNがシリアのアサド大統領が北朝鮮を訪問するというスクープを報じた。現時点では誤報になっているが、そんな報道が出る根拠はあった。一昨年の9月にシリア内戦で北朝鮮人民軍がシリア政府軍と一緒に軍事行動をしていると、シリア政府関係者が述べたことがあったからだ。しかも、2007年9月にイスラエル空軍のF-15戦闘機がシリアの核施設を爆撃、破壊した時に派遣されていた北朝鮮の技術者も死亡した。

この時、興味深かったのはイスラエルのアラブ諸国への爆撃にも拘らず、アラブ諸国は無反応だったが、真っ先にイスラエルを非難したのが北朝鮮だったことだ。シリアの首都、ダマスカスには「金正日公園」と名付けられた公園まである。

一方、米朝首脳会談に至る過程で、最後の土壇場で北朝鮮に泣きつかれた中国共産党は、これまでの金正恩の無法で野蛮な振る舞いに我慢をこらえていたのだが、最後の局面で金正恩を庇護する立場を取ることで、朝鮮半島情勢を有利に展開しようという戦略が見えたのである。それが異例の短期間での2回に及ぶ中朝首脳会談となった。

この2回の習・金会談の意味と重要性がなかなか的確に報じられていない。韓国の文在寅大統領は盧武鉉元大統領の重要なブレーンであったことから解るように、現在の韓国政権は北の代理人の役割を担っている。盧武鉉元大統領が退任後に逮捕され、検察の取り調べ中に自殺したのが2009年5月23日だったが、朴槿恵前大統領と李明白元大統領という盧武鉉政権後の保守派の大統領の裁判が、それぞれ昨年の 5月23日、今年の5月23日に開廷している。

そんな韓国の状況も習近平は俯瞰しながら、南北朝鮮をそろって中華帝国の手駒にしようという戦略に自信を深めている。

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