内装は聖母マリアの古来の呼び方である「海の星の聖母」から連想される海をイメージしたといい、白と淡いブルーを基調とした、優しい空間が広がっています。

マルタの教会といえば真っ先にその名が挙がる、ヴァレッタの聖ヨハネ大聖堂などとはずいぶん雰囲気が異なります。騎士団の威光を誇示するような、荘厳かつ華やかで男性的な聖ヨハネ大聖堂に対し、モスタ教会は、人民による人民のための教会だからでしょう。

このモスタ教会には、世界で3番目に大きなドーム教会という以外にも、有名な「モスタの奇跡」のエピソードがあります。

日本ではあまり知られていませんが、第2次世界大戦の激戦地となったマルタ。戦略的な位置関係から敵軍への攻撃の拠点となったために、その報復として恒常的に爆撃を受けていたのです。

1942年4月9日のこと。ドイツ軍の爆弾がモスタ教会に落とされました。爆撃が行われたのはちょうどミサの最中で、教会内には300人以上の信者が集まっていたといいます。ところが、その爆弾は教会の天井を突き破ったものの炸裂することはなく、モスタ教会では死者どころかけが人すら出ることはありませんでした。

このエピソードは奇跡として語り継がれており、教会の奥にある展示室にはこのときの不発弾のレプリカが置かれています。

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