日本円や米ドルなどの法定通貨は、国家の都合で大量に発行されることで、その価値を一方的に引き下げられてしまう資産だ。歴史を振り返れば、自国の通貨の価値を下げて、政府は貿易黒字を確保し、インフレへの誘引で景気回復を図ろうとしたこともある。ただ、その政策が間違っていたとしても、ツケを払われるのは国民のほうである。私たち国民は、法定通貨を値下がりしにくい稀少資産や有価証券などに替えて防衛するしかない。

資産形成の王道は「分散投資」だ。一般的には、現預金に不動産、金、美術品など、互いに値動きの性格が異なる稀少資産を保有したり、株式や為替などによる運用を行ったりすることにより、リスクヘッジをしながら、少しずつ殖やしていくことになる。こうしたポートフォリオに、今後は仮想通貨を加えることが投資家の間でも主流になっていくだろう。

株式投資の世界で「テンバガー」という言葉がある。短期間に株価が10倍以上に急騰する銘柄のことを指す。企業業績に比べて、市場での人気が著しく低く、バランスを欠いている株式を目ざとく見つけ出して保有しておくと、あるタイミングで株価が2倍や3倍に高騰し、稀に運よく「テンバガー」の恩恵を受けることができるかもしれない。そうなれば、投資家仲間に対して鼻高々で自慢できる。

ただ、仮想通貨の世界では、短期間に10倍以上の高騰を見せる銘柄が、次々に登場している。もはや「テンバガー」は決して珍しい存在ではない。仮想通貨は、まだ歴史が浅く、しかも将来の通貨の概念を大きく変える潜在性を秘めているため、今後の成長性については大幅な伸びしろがある。さらに、市場参加者が増加し、仮想通貨の流動性が高まれば、市場に流入する人々も世界規模で急増していくに違いない。

(つづく~「仮想通貨のゆくえと日本経済vol.9 仮想通貨の「1%投資法」とは【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】」~)

◆フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議の主要構成メンバー
フィスコ取締役中村孝也
フィスコIR取締役COO中川博貴
シークエッジグループ代表白井一成

【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】は、フィスコ・エコノミスト、ストラテジスト、アナリストおよびグループ経営者が、世界各国の経済状況や金融マーケットに関するディスカッションを毎週定例で行っているカンファレンス。主要株主であるシークエッジグループ代表の白井氏も含め、外部からの多くの専門家も招聘している。それを元にフィスコの取締役でありアナリストの中村孝也、フィスコIRの取締役COOである中川博貴が内容を取りまとめている。2016年6月より開催しており、これまで、この日本経済シナリオの他にも今後の中国経済、朝鮮半島危機を4つのシナリオに分けて分析し、日本経済にもたらす影響なども考察している。

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