シナリオプランニングはもともと軍隊で活用されてきた。軍人こそ「不確実性への対応」が生死を分かつほど肝要となる立場である。それを応用し、現在では企業の戦略策定のプロセスとして活かされている。

シナリオプランニングとは、「必ず起きること」を予測するものではない。むしろ「起きるか起きないかわからない」未来を複数描き、それに備えようとする方法論である。これは、相場予測をしたがる投資家が、なかなか勝てないのに似ている。シナリオプランニングの神髄は、「未来の値動きを予測するのでなく、現実の値動きに対応する複数の投資プランを練る」投資の基本姿勢にも通じるものがある。

人類の歴史は、食糧と安全を確保する欲求とそれを克服し、実現し続けてきた歩みだった。つまり、何を目標にして、何に取り組めばいいかが明確な時代が長く続いた。しかし、食糧と安全がある程度確保され、それなりの自由と平等と収入を得られるようになると、次に何をすればいいのかがわからなくなる。しかし、目に見えないけれども確実に、物凄い勢いで経済格差は世界規模で拡大している。現状維持は、衰退に等しい。

このように、誰にとっても明らかな目標が溶けて無くなり、にもかかわらず不確実性が増す現代、そしてその延長上にある未来を生き抜くためには、考えうる極端な「シナリオ」をすべて描き出さなければならない。未来に何が起こるか、自分自身を取り巻く環境がどのような状態になり、どのような影響があるか、あらゆる角度から複数のパターンを抽出し、今から体験しておくことが重要である。

■仮想通貨の華々しい歴史は、まだスタートを切ったばかり

2017年1月の時点で、仮想通貨全体の時価総額は、約150億ドル(約1兆7000億円)だったが、その1年後には、約8000億ドル(約90兆円)にまで膨れあがっている。つまり、今まさに法定通貨から仮想通貨への大移動が起きているのだ。ただし、世界の金融市場では毎日400兆円以上が飛び交っているのだから、グローバルの尺度において1兆円や90兆円は決して驚くべき額ではない。

今後、さらに桁が違う規模の資金が流入してきたとしても、決しておかしくはない。いつの日か、世界経済の主役に躍り出て、米ドルや日本円を補助的な貨幣へと追いやってしまう日が到来するのかもしれない。仮想通貨には、そう期待させるほどのポテンシャルが秘められているのである。

◆執筆者
シークエッジグループ代表 白井一成
フィスコIR取締役COO 中川博貴
フィスコ取締役 中村孝也

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