4世紀、聖ニノがこの地に教会を建てることを決め、シドニアの墓の上に生えていた7本の杉の木を伐採します。6本を立て終え、最後の1本を立てようとしたところ、木が宙に浮いて立てられません。

聖ニノが一晩中祈りを捧げると、最後の1本も地に降り立ち、その木から流れ出た樹液が人々の病を治す力をもっていたことから、「スヴェティ・ツホヴェリ」と名付けられました。

現在も、大聖堂の下にはキリストの衣が埋まっていると信じられています。

こうした伝説もあって、ムツヘタはイベリア王国のみならず、コーカサス全体においてキリスト教の聖地とみなされるようになり、巡礼者が増加。スヴェティ・ツホヴェリ大聖堂も、規模を拡大していくことになります。

11世紀の大改修によってほぼ現在見られるような姿となり、現在はトビリシのサメバ大聖堂に次いでジョージア第2の規模を誇っています。

上から見ると十字架の形をした大聖堂は、直線を多用した重厚感あふれる外観が印象的。

石造りのシンプルな外観同様、内部にも西ヨーロッパの大聖堂に見られるきらびやかな装飾はないかわりに、なかば色あせたフレスコ画と太い柱が厳かな空気とどっしりとした迫力を生んでいます。

熱心に祈りを捧げる信者たちの姿を見ていると、キリスト教徒でなくとも「この大聖堂にまつわる伝説はすべて本当かもしれない」「ここなら、人智を超える出来事が起こっても不思議ではない」という気にさせられます。

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