トルコ イスタンブールには、歴史のなかで重要な役目を果たした人物を記憶するために建てられたモスクがいくつもあります。

旧市街の急坂に建てられた「ソクッル・メフメト・パシャ・ジャーミィ」もそんなモスクの中の一つです。

「ソクッル」とは、いまのボスニアのソコロヴィチ出身の、という意味で、メフメトがオスマン帝国時代のデヴシルメ(オスマン帝国の領土内に住む異教徒の少年を徴収しイスラムに改宗させて教育を施し、帝国のために戦う精鋭部隊に仕立て上げる制度)によってイスタンブールに連れて来られたことを意味しています。

デヴシルメによりオスマン帝国入りしたメフメトは、35歳のときに皇室式部官となり、スレイマン大帝の目に留まります。モハーチの戦いや第一次ウィーン包囲にも兵士として従軍し、1555年49歳のとき第三宰相に、1561年には第二宰相に、1562年にはスレイマン大帝の孫娘でセリム2世の娘にあたるイスミルハン・スルタンと結婚し、1565年にはついに大宰相の役職にまで上り詰めます。

1568年にスレイマン大帝の臨終にも立ち会い、その後セリム2世の治世になっても大宰相として君臨し続け、帝国の繁栄を支え続けたのです。

このように、帝国史上、重要な役目を果たした彼のためのモスクは、トルコ史上最高の建築家といわれるミマール・スィナンによって設計されました。

モスク内部の装飾には、イズニックタイルというトルコのタイルが大量に使われています。青や緑の花のモチーフが至る所に施されおり、モスクを美しい青に彩っています。

規模こそ大きくはないものの、帝国の政権を長きにわたって担い、幼いころに祖国を離れ帝国のために生きた彼のモスクは、帝国における彼の存在の大きさを感じさせます。

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