■ポリコレを掲げても西欧人のアジア軽視は治らない

今回のドルガバの件に関しては、とある中国人のネットユーザーが、西洋人役者を使って、西洋の食器で中華料理を食べようとして苦戦した動画で「反撃」しました。

https://www.youtube.com/watch?v=lSvLDtLGJ3o

確かに西洋の食器で中華料理を食べようとするのは難しいでしょう。

動画のナレーションを大まかに翻訳すると「今日は、西洋のこういう金属製の道具で中華の偉大なる肉まんやラーメンを食べることをお見せしましょう」とドルガバのセリフをモノマネして、そっくり返してみせました。

いずれにせよ、洋食にはフォーク・ナイフ、中華にはお箸というのが最適でしょう。個人的には、どちらが優秀な工業デザインというと、「お箸」と即答します。棒二本で世界各国の料理をだいたい食べられる、汎用性の高い食器です。

この中国の素晴らしい発明”お箸”は、日本や朝鮮半島、さらにアジア地域でも広がった文化ですが、単純な食器としての機能だけではありません。子供の頃に親は「お箸をちゃんと握るのは人間としての教養」としつけます。すでに東洋の文化として確立されているのに、それを見下す欧米人は無知と言えるでしょう。

日本にも和食文化の一環としてお箸を丁寧に扱ったり、細かいルールがあります。日本のとある企業では、新入社員を面接する際に、お箸でガラスのビー玉を挟んで、ケースからケースに運ぶテストを行っていました。これは社員の「人柄」を測定です。ここでは、お箸をきちんと使い、慎重に掴みにくいビー玉を運べる人間は「真面目で穏やかな性格、かつ正しい価値観の持ち主」ではないか、と見なされたといいます。

ドルガバは今回の事件で中国だけではなく、お箸文化を浸透しているアジア諸国をも中傷したことになり、企業イメージのダウンは避けられません。しかしドルガバの一件に限らず、西洋人の白人至上主義はまだ有形・無形に残っていて、差別のない日本に持ち込まれているように感じます。

私のエピソードですが、先日も知り合いのドイツ人男性を誘って、一緒に書籍を作ることになっていました。私はさっそく出版社の社長と担当編集とライターさんに打ち合わせの日時をセッティングし、書籍の企画書まで書いていました。しかし、打ち合わせの前夜に、彼は「今は就職活動に忙しくて、書籍を作る暇がない」という理由でドタキャンしてきたのです。

そして同時期に、彼の来日の歓迎会を開こうと、日本人5人と約束したパーティーも、一週間前に他の用事があるとの理由でキャンセル。このドイツ人男性は私以外に、日本人8人との約束を気軽に破ったことに、ドン引きしました。白人がこんなに気軽にドタキャンする行為なんて、アジア人相手だからではないかと考えてしまいます。

日本では、昔から海外アーティストの”ライブキャンセル”は「半ば仕方ないこと」になっています。ポールマッカートニー、レニー・クラビッツ、さらにロシア人ユニットのt.A.T.u.にいたっては、生放送中にドタキャンして帰っています。これらも問題の根底に「欧米によるアジア軽視」という構図があるように思えてなりません。

いくらポリティカルコレクトネスを掲げて人権意識の高さをアピールしていても、欧米人のアジア蔑視はなくなりません。

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