ドイツを代表するお祭りのひとつがカーニバル。復活祭まで40日間の断食期間が始まる前に開催され、各地で大規模なパレードが行われるなど大いに盛り上がります。
ドイツのカーニバルと言えばケルンやデュッセルドルフ、マインツといったライン川流域の「陽気」なカーニバルが有名。ところ変わってドイツ南西部の黒い森では、ゲルマン民族の風習を前面に押し出した伝統味溢れるカーニバルが体験できます。
今回はそんな黒い森から、フィリンゲンという町で開催されるカーニバルを紹介しましょう。まるで能面のような木のお面をつけた愚者やちょっと不気味な猫など、多種多様なキャラクターが登場し、伝統のカーニバルを盛り上げます。
ちなみに黒い森ではカーニバルを「ファスネット」と呼ぶので、ここからは筆者もこの呼称で紹介していきます。
黒い森の西側に位置するフィリンゲン。中心部を囲むようにいくつもの塔が立ち、中世の趣にあふれた小さな町です。通りの建物をよく見ると凝った装飾が施されている所も多く、町全体がカラフルな印象を与えています。
この町で開催されるファスネットは、15世紀まで起源をさかのぼるという大変歴史のあるお祭り。町の年史によると、既に当時からお面を被った人々の行進が行われていたのだそうです。
また時代を重ねるごとに町の歴史や文化と複雑に絡み合ってきたお祭りでもあり、まさにフィリンゲンのアイデンティティーとも言えるでしょう。
ファスネットの盛り上がりが最高潮に達するのは、「薔薇の月曜日」と翌日の火曜日。この2日のあいだに大規模なパレードが開催されるほか、町の中心では演奏隊による生演奏がお祭りムードを盛り上げます。
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