中世より宗教の町として発展した、ドイツ中部の町フルダ。ゲーテ街道に属することで知られる一方、豪華絢爛なバロック建築が数多くのこる「バロックの町」でもあります。そんなバロックの町を象徴する建物が、町の中心にあるフルダ城。贅をつくした部屋や陶器コレクションが並ぶ城内ほか、手入れの行き届いた庭園やオランジェリーからは、当時の優雅な暮らしぶりが鮮やかによみがえる様です。

現在のフルダ城が建設されたのは1706年から1714年にかけて。それ以前に立っていたルネサンス様式の城から、装飾の華やかなバロック様式の城へと変貌と遂げました。城は町を治めていた修道僧、のちには司教の住居として使用され、時代ごとに拡張や改築が繰り返されます。

城内における最大の見どころは「領主の間」。天井には神話をテーマにした幻想的なフレスコ画が、1712年に描かれた当時のオリジナルのまま残されています。フレスコ画のほかにも細かな装飾がいたるところに施されているので、ぜひ時間をかけて鑑賞してみましょう。領主の間は現在でも祝賀行事や市議会の会合などで使用されています。

2階(ドイツでの1階)部分には、かつて城の主が住居として使用していた部屋の数々が続きます。部屋ごとに決まったテーマがあるかのように、置かれている調度品や壁の色が異なるのがとても印象的です。

いくつも続く部屋の一番奥にあるのが、これまでの部屋よりもひときわ豪華な「鏡の間」。数々の鏡や絵画がゴールドの縁で装飾され、城主の権力を示すべく眩しいほどの煌びやかさを放っています。

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