トルコ共和国最大の都市、イスタンブールは、かつてビザンツ帝国の帝都コンスタンティノープルとして栄華を極めました。

イスタンブールには、ビザンツ時代の歴史ある建造物がいまでも残っており、博物館として一般公開されているものや、街中に当時のままの面影を残しながら建っている記念碑などが数多く見られます。

イスタンブールの観光でまず外せないアヤソフィア博物館は、聖堂からモスクに、そして無宗教の博物館に転用された代表的なビザンツ建築のひとつですが、そんなアヤソフィアを建設したユスティニアヌス1世が建設したもののなかに、「キュチュック・アヤソフィア」があるのは、あまり知られていません。

「キュチュック・アヤソフィア・モスク(Küçük Ayasofya Camii)」は、小さなアヤソフィアという意味です。あのアヤソフィア大聖堂と同じく、コンスタンティノープル陥落後に教会(聖堂)からモスクに改修されました。「キュチュック・アヤソフィア」は博物館には転用されず、現在でもムスリムの祈りの場として利用されている現役のモスクです。

「キュチュック・アヤソフィア」は536年にユスティニアヌス帝によって「聖セルジウス・バッカス教会」として建設されたのが起源です。アヤソフィア博物館よりも歴史は古く、イスタンブールに現存する最古のビザンツ建築として、マルマラ海岸沿いに静かに佇んでいます。

ユスティニアヌスがまだ皇帝になる前、当時の皇帝ユスティヌスに暴動を仕掛けたとして処刑されるところでした。ユスティニアヌスが処刑に課される前のある夜、二人の聖人セルジウスとバッカスがユスティヌスの前に突如現れ、ユスティニアヌスを処刑しないように伝えました。その結果、ユスティニアヌスは処刑を逃れ、数年後の527年に皇帝になることができました。ユスティニアヌスは、自身が皇帝になることを手助けしたこの二人の聖人に、教会を捧げるべく建築したという伝説が残っています。

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