金融庁は20日、資金洗浄・テロ資金供与対策に取り組む国際組織「金融活動作業部会(FATF)」の2019年10月会合について、資金洗浄・テロ資金供与対策において非協力的な国・地域を特定する「FATF声明」と「国際的な資金洗浄・テロ資金供与対策の遵守の改善:継続プロセス」に関する文書が採択および公表されたと発表し、原文と仮訳の公表資料を公開した。

FATFは10月28日から3週間ほど対日審査を行っており、政府や暗号資産(仮想通貨)交換業者も含む金融機関から聞き取り調査などを実施していた。今回の発表では、高リスク及び非協力国・地域が発表されている。

FATFは、『資金洗浄・テロ資金供与のリスクから国際金融システムを保護し、資金洗浄・テロ資金供与対策の基準の遵守を強化するため、重大な欠陥をもつ国・地域を特定し、これらの国・地域と協働して、国際金融システムにリスクをもたらす欠陥に対処していく』と伝えており、「高リスク及び非協力国・地域」として、北朝鮮(DPRK)とイランを挙げた。

北朝鮮は資金洗浄・テロ資金供与対策の体制における重大な欠陥に対処しておらず、FATFはそれによりもたらされる国際金融システムの健全性への脅威について、引き続き憂慮していると指摘する。さらに、大量破壊兵器の拡散や拡散金融に関連した北朝鮮の違法な行為によってもたらされた脅威についても、深刻に憂慮しているという。このため、『北朝鮮が金洗浄・テロ資金供与対策の欠陥に対して、直ちに意義ある対応を講じることを強く求める』と主張した。北朝鮮は今年、仮想通貨交換所に対するハッキングの関与の可能性についても国連の報告書で指摘されていた。

イランについては、『イランに本拠を置く金融機関の支店・子会社に対する強化した金融監督の実施』、『金融機関によるイラン関連の取引に係る強化した報告体制又は体系的な報告の導入』、『イランに所在する全ての支店・子会社に対して金融グループが強化した外部監査を行うことを求めること』を要請する対象とした。

イランは2017年11月に現金申告制度を、2018年8月に資金供与対策法の改正法を、2019年1月に金洗浄対策法の改正法をそれぞれ制定し、これらの法整備に向けた努力が進展していることは認めるとしている。ただ、『パレルモ条約及びテロ資金供与防止条約の批准のための法案が議会を通過したが、まだ施行されていない』と指摘し、残りの法律が完全に施行され次第、直ちに、それらの法律に含まれた措置が、イランのアクティブプランに対応しているかをFATF基準に沿って判断するための検証を行うと伝えている。

また、「国際的な資金洗浄・テロ資金供与対策の遵守の改善:継続プロセス」では、資金洗浄・テロ資金供与対策に重大な欠陥を有し、かつそれらに対処するためのアクションプランを FATF とともに策定した国・地域を挙げている。「重大な欠陥を有する国」には、バハマ、ボツワナ、カンボジア、ガーナ、アイスランド、モンゴル、パキスタン、パナマ、シリア、トリニダード・トバゴ、イエメン、ジンバブエを挙げ、「継続プロセスの対象から除外される国」には、エチオピア、スリランカ、チェニジアを挙げた。

FATFはこれらの国・地域に対し、『迅速かつ提案された期間内でのアクションプランの履行を要請する』ほか、『これらのアクションプランの履行を注意深く監視する』としている。