1.「資金流入効果」、「ネットワーク効果」による価値の向上
■a.DAppsを活用したビジネス創出で価値測定ドライバーが出現
市場でつく価格と価値とが一致するとは限らない。例えば株式市場の場合、自動車メーカーの株価は、短期では為替レートと高い相関が確認されるが、長期では自動車メーカーの企業価値のドライバーと考えられる生産台数との相関が高い。これは、自動車メーカーの「価格」は為替レートの影響を強く受ける一方、自動車メーカーの価値は「生産台数」で規定されている可能性を示唆している。暗号資産市場においても「価格と価値が異なる」という視座を持つ心掛けが大切であろう。
配当や金利を生み出さない暗号資産の投資評価は、配当割引モデルや割引キャッシュフローモデルなどに代表される従来の証券投資論の手に余る。詳細には立ち入らないが、それでもビットコインを中心とした暗号資産の投資評価手法を構築しようという試みが続けられており、価値に注目するという観点からは、(1)価値貯蔵、(2)トークン速度、(3)メトカーフ比率、(4)NVT比率、(5)アクティブアドレス数、(6)小規模新興国としての暗号ネットワーク、などの観点に注目した手法が提唱されている。一方、価格を予想する上では、チャート分析を中心としたテクニカルな観点に注目したり、各種経済指標・金融指標との相関係数に注目したりする手法が一般的と見られる。
暗号資産の中には「対象資産が、すでに流通市場に上場している」かつ、「対象資産を保有するユーザーの体験(=できること)が拡張していく」という側面を有するものもある。前者は国内において希少である。一方、上場しているというだけでは、価値のドライバーを特定することが難しかったため、必然的に価値分析よりも価格分析に依拠せざるを得ない面が大きかった。しかし、DAppsを活用したビジネス創出により、DAppsで使用される当暗号資産の保有量、つまり資金流入量の増加も想定することができれば、価値を評価する上で、「資金流入効果」、「ネットワーク効果」がドライバーと考えられる。価格の先行きを考える上でも、価格分析のみならず、価値分析という観点にも配慮することが重要だ。
■b.資金流入効果
「資金流入効果」について、東京株式市場が価格のピークを付ける過程を見てみると、1985年に190兆円であった東証1部の時価総額は1989年末に611兆円まで駆け上がった。その間、どの程度の資金が流入したのかを試算している。
試算方法は以下の通りだ。
・投資部門別売買代金の売り買い差し引きを計算
・信用取引売買代金の売り買い差し引きを計算
・上記の合計を資金流入額とする
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