D2Cという販売方法などの画期的な取り組みで注目されているのが、ベビーフード「the kindest babyfood」などを販売する株式会社MiLだ。
D2Cは「Direct-to-Consumer」の略で、「自ら企画、生産した商品を消費者とダイレクトに取引する販売方法」を意味する。自社で生産から販売まで一貫して行うため高い収益性があり販売の自由度が高いだけでなく、顧客の意見を取り入れやすく商品のアップデートがしやすいというメリットがある。
MiLは、このD2Cで子育て家庭向けライフスタイルブランド「the kindest(カインデスト)」を展開している。「the kindest」は、日本初の離乳食のサブスクリプションサービスとしてスタートし、現在はベビーフードの「the kindest babyfood」を中心にキッズフード、おやつ、ドリンク、だしなどを提供。「こころとからだに“やさしい”離乳食」を目指し、商品企画の段階から小児科医、管理栄養士のアドバイスを受け、熟練フレンチシェフがメニューを考案している。
具材の野菜・肉は国産のものを選び、魚は鮮度の高いものにこだわり、化学調味料や着色料・保存料などの不要なものは使わない。栄養・素材・味にこだわり、離乳食期の赤ちゃんに徹底的に配慮。自社で一貫するD2Cだからこそ実現できる商品だ。
さらにMiLで重要視しているのは、顧客の声だという。オンラインで販売をしていたことから、会員やSNSでの反響や要望をすぐに商品に反映して改善を続ける。その結果、9月から販売を開始した「the kindest babyfood」が生まれた。
「もっと安価にthe kindestを買いたい」という声に応えて、栄養や安全性などのこだわりはそのままに、食材だけを一部変更し改良を重ねて手頃な価格の新ラインナップの「the kindest babyfood」が誕生。既存商品をリニューアルした「the kindest babyfood premium」と合わせて2つのシリーズが展開される。
MiLは代表の杉岡侑也氏と元保育士兼介護士で妻の杉岡千草氏が、夫婦で起業した。千草氏は、ハンディーキャップを持つ人たちと関わっていく中で、食に関する悩みを抱えている多くの家庭と出会い、それが起業のきっかけになったという。
現在は、サッカー選手の長友佑都選手をはじめ名だたる投資家や企業家から出資を受け、侑也氏は2020年 「Forbes Japan」 「Forbes Asia 」にて“世界を変えるUNDER 30”に選出されるなど、注目の企業となっている。
杉岡侑也氏に「the kindest」のリニューアルや、MiLの取り組みなどについて聞いた。
ユーザーの声を取り入れてリニューアルを実行
──「the kindest」をリニューアルすることになった経緯を教えてください。
これまでのシリーズは、1パウチ600円と市場価格の6倍ほどでした。その分こだわりが詰まっていることをお客様には満足いただいておりましたが、「金額が高いので普段使いしにくい」「友人にすすめにくい」といった声も見受けられました。そこで、忙しい日に普段使いできる価格を抑えた商品を販売することにしました。
──「the kindest babyfood」の開発で苦労した点はどういったものでしたか?
D2Cモデルを採用しているので、お客様の声はたくさん届きます。一方で、「その意見が果たして世の中のインサイトなのか?」ということはしっかり見極めなければなりません。お客様の声をしっかり汲み取りつつ、将来を見据えて「(お客様的にも、ブランド的にも、社会的にも)それが本当に正しいのか? 応援してもらえるブランドになれるのか?」も考えなければいけないことが開発時に苦労する点です。
──「the kindest babyfood」の開発でのこだわりについても教えてください。
「the kindest」はお客様と作ってきた商品ですので、お客様の意見を取り入れる点にはこだわりました。今回の新シリーズにおいても、企画の段階からユーザーインタビューしたり、試作品を試していただき、しっかり意見を取り入れてきました。
──発売された「the kindest babyfood」に対するユーザーの反応を見てどう思われますか?
ブランドとしてブレさせたくないこだわりやブランドイメージと、お客様の満足度向上をうまくマージできていると思います。
D2Cには商売の本質がある
──D2Cという販売方法のメリットや課題はどういったものでしょうか?
D2Cの素晴らしい点は、商売の本質である「困っている人を助ける」ということがしっかり目に見える、声がきちんと届くというところにあります。
D2Cは、従来の製造小売業の原点をデジタル/インターネットの力と掛け合わせ、拡大することだと定義しています。
食品でいうと、課題→商品化→販売というものがこれまでの製造・小売の流れでしたが、今はユニークネス/パーソナルに対応していくことが大事です。
リアル店舗も出店し、オンラインとオフラインを融合
──10月からは大阪の阪神梅田本店のベビー&キッズワールドに出店しています。どういった狙いがあるのでしょうか?
阪神百貨店さまとともに、食からヘルスケアを当たり前にする取り組みを進めることで、多くの人が“食とヘルスケア“を考えるきっかけを作りたいと思っています。
阪神百貨店は「食の阪神」と呼ばれる、大阪が誇る歴史ある偉大な存在です。そんな阪神百貨店さまもフルリニューアルを機に、ヘルスケア社会へさらに発信を強めていくとお聞きし、是が非でもと相談にうかがいました。
また、小売りのデジタル化も進む中で、デジタルを中心としてブランドを成長させてきた当社だからこそ貢献できることもあり、今回の取り組みが実現したかと思っています。
具体的には、リアルのキッチンスペースを用いたドクターやシェフのセミナーなど、オンラインでも楽しめるような会員様限定のイベントや勉強会を行なったりすることで、オフラインとオンラインの融合企画を進めています。
──今後のthe kindestの展望について教えてください。
現在、ベビー・キッズに向けた商品ラインナップが中心となっていますが、今後は子育て家庭を支援するブランドとして、産前産後含めたシーンでのサポートにも挑戦して参ります。