製薬会社のファイザー株式会社が、4月19日(火)にオンラインでプレス向けセミナー「知っておきたい十人十色の子どもの低身長~身長を伸ばす生活習慣から成長障害の最新治療まで~」を開催した。

セミナーの趣旨は、5月5日のこどもの日を前に、子どもの低身長に関する科学的に正しい知識を紹介するというものだった。

専門医である望月貴博氏(希望の森 成長発達クリニック院長)と曽根田瞬氏(たなか成長クリニック副院長)が登壇して、子どもの低身長についての解説を行なった。

背を伸ばすサプリは存在しない

望月氏は「知っておきたい子供の成長障害」と題して、身長に関する科学的に正しい知識と通説の違いについて解説した。

まず、身長が伸びるとは、骨が伸びることではないという基礎的な知識に言及。軟骨細胞が増えることで新しい骨が形成されて、身長が伸びるのである。

「そもそも低身長症は病気なのか?」という疑問に対しては、低身長症はICD-10(WHOが作成している疾患の分類の第10版)において疾病として認められていると回答した。

食生活に関しては、「たくさん食べれば、大きく成長できる」と単純に考える人も多いが、食べ過ぎは肥満につながるので、結局は適切な量の栄養バランスのとれた食事がよいと解説。

身長を伸ばすことを謳うサプリも売られているが、「背を伸ばす食品・サプリはありません」と望月氏は断言した。商品名やキャッチフレーズなどで背が伸びる効用をイメージさせているだけと考えたほうがよいだろう。

毎日の注射が患者に負担を与える

続いて曽根田氏が、低身長症の治療の最新動向についての解説を行なった。低身長には医学的な定義があり、それは身長が-2.0SD(標準偏差)以下というものである。

低身長は、「病気とは考えにくいもの(家族性低身長、体質性低身長など)」と病気としての低身長に分けられる。病気は「内分泌疾患(ホルモンの病気)」「先天性疾患(生まれつきの病気)」、「その他(主要臓器の異常など)」に分類できる。

低身長で受診した患者の割合としては、家族性低身長や体質性低身長などであり病気ではないと診断された人が63.3%で一番多いとのこと。病気と診断された人は、内分泌疾患が15.3%、先天性疾患が9.1%、SGA性低身長症(在胎期間の身長・体重の増加が少なく、標準より小さく生まれること)が8.5%、その他が3.8%となっている。

では、低身長症の治療法はどういうものなのだろうか? 曽根田氏によれば治療方法は「成長ホルモン補充療法」で、飲み薬ではなく、毎日、注射しなければならないという。

注射器はペン型のもので操作は簡単だが、やはり毎日の注射は患者の子どもやその家族にとっては負担が大きい。

患者への負担を大幅に減らす新薬

その負担を減らすことができる画期的な新薬が「エヌジェンラ®皮下注ペン」(以下、エヌジェンラ)である。週1回の注射でよく、しかも、従来以上の効果が期待できるという。

曽根田氏は「成長ホルモン治療の新時代」と述べて、エヌジェンラへの大きな期待を表明した。

専門医のふたりに続いて、ファイザーの嶋大輔氏(希少疾病領域メディカルアフェアーズ パイプラインチーム部長)が登壇。ファイザーが患者と保護者の治療負担の軽減と治療アドヒアランス(患者が積極的に治療や服薬に関わること)の向上を目的にエヌジェンラの開発を行なったことを説明した。

臨床試験で患者と保護者に調査したところ、エヌジェンラによって患者と保護者の負担感が減少し、薬を服用する際の利便性は向上したことが明らかになった。

ファイザーはすでにエヌジェンラの日本での製造販売の承認を取得している。低身長症に悩む子どもとその家族の生活を大きく変えるブレイクスルーになることが期待される。